えーと、良いの?





おとこん 15





夜にシャークの部屋を訪ね、開口一番にこう言った

「シャークさん!明かりとか照明関係の魔法書ってすぐ手に入りますか?」
「…なんだ突然」

寝る前らしく、髪が降りている
おお…若く見える

「エヘッ♪ちょっといい事思いついちゃって」

バチコーンとペ×ちゃんばりにシャークへウィンクを送る

「…何企んでんだ…?」
「あ。大丈夫ですシャークさんに害は及びませんから

ターゲットはもっぱらスラム街のチキンな雑魚共です

「オイ!本気で何するつもりだ?!」
「強いて言うなら花中×さんの様に目が光るようになりたいだけです」
「誰だソイツ」
「ひげ部の部長です」
「は?ひげ部??」
「ええ。ひげ部の部長です」

にこにこ

「………」

シャーク ハ ナニカ イイタソウ ニ コチラ ヲ ミテイル

にこにこにこ

 ハ シジュウ エガオ デ タイオウシタ

「……………」

シャーク ハ ナニカ イイタソ(以下略)

にこにこにこにこ

 ハ シジュ(以下略)

「…もういい」
「そうですか?」
「ああ」

勝った!やっほーい
今、目を赤く光らせる魔法(と呼んでいいのかは不明)の研究中なのです
だって暗闇からそんなの出てきたら怖いじゃん?(たとえ夜目が鍛えられてても)

「で?何の研究するつもりなんだよ」
「だから目をですね?目をこうビカーっと…」
「もう良い言うな。アホが伝染る
「ちょ、シャークさんが聞いたんですよ!?
っていうかアホが伝染るってひど――痛っ」

ぶんぶん腕を振って抗議していると壁にぶつけてしまい
一瞬眉をしかめた
こちらを見ていたシャークは近付いてくる

「…
「はい、なんですか?」
「腕どうした」

ひょいっと左腕を掴まれ
身体の動きが止まった

「…どうもしてませんよ?」
「――俺が今掴んでる腕から、包帯の感触がするんだが?」

わー…絶対ばれてはいけない人にばれた…

「いやこれはなんでもな」
「もう俺に性別ばれてんだから診せても問題ないだろ?」

聞けよ!

「ち、治療費高いから嫌です!」
「…じゃあ特別大サービスで無料で診てやるから今すぐ腕出せ」
「っ駄目です!」

勝手に袖をたくし上げられそうになり
慌てて腕を引き戻したらスッと目を細めてこちらを見られた

「――…診られちゃ不味い類の怪我だっつう事だな?」

Oh☆BO KE TSU

「うーあーえーとそのー…じゃっ!!魔法書よろしくお願いします!!」

ジリジリ後退し出口まで寄り
ドアを開こうとして、捕まった

…俺が二度も見逃してやると思ったか?――逃がさねぇよ」

シャークはニィィっと笑い、ドアに両手をついて退路を塞ぐ

いつかと同じシチュエーションなんですけど
しかも今回は天の助け(メイズ)いないし…!!

「シャークさんあの、その顔…とてもお医者さんには見えません」

超怖いちょうこわい極悪人の顔だよ

「なんとでも言え。来い」

腕を引かれ奥に連れて行かれそうになる

「〜〜大丈夫ですって、ば!!」
「っつ!!」

腕を振り払ったと同時にシャークが手を押さえ痛がる

「…え。シャークさん!?」

手ぇ怪我させちゃった!?
と思いシャークに近付くとガシィッと頭を掴まれた

「ったく、手間かけさせんな」
嘘かよ!!ちょ、もう治りかけですから!」
「治りかけが肝心なんだ」
「〜〜〜っ!!」

シャークの手を外そうともがいていると、ポタッと血が床に落ちた
腕を見ると袖に血が滲んでいる

ピタリと両者の動きが止まった

「ははは…おい、どこが治りかけだって?ん?」
「……は、あははは…」

物凄い優しく声をかけられました
超良い笑顔!背景が超シャイニング!!
ヤバイ…完全に怒ってらっしゃいます

「大丈夫――」
「じゃねえよな?出血してる状態で説得力無えよ
次抵抗なんてしてみろ…剥いて外出れなくしてやる
「ッ!!?」

シャークの目が据わってる…
む…剥くって言ったか今!?

「なんでそんなに診たがるんですか」
「なんでそんなに診せたがらねえんだよ」
「………病院嫌いなんです!」

フイッっと視線を逸らす

「それ、いつかも言ってたな」
「だって…絶対縫われる…」

ボソッっと言った言葉にシャークは
額に青筋を浮かばせた

「縫う…?」
「ヒッ!し、シャークさん落ち着いて!顔、顔が!!」

お、鬼のような形相に…!!
言ってる場合じゃないけど、今日は色んな表情見るな

「放置してたのか」
「放置はしてません!傷だって塞がってたんです…さっき開きましたけど。
幸い、神経無事だったし良いかなって」

血が出すぎると水分欲しくなるから、そうなる前に止血しなきゃいけないけど…

「良いわけあるか!診せろ!!」
「嫌で――って袖まくらないで下さぃっった!!!」

無理矢理袖をまくられ包帯を解かれる
痛みで語尾が変になった
シャークは自分の手が血で濡れるのも構わず傷を診る

「お ま…深いじゃねえか!!さっさと病院来やがれ放置すんじゃねえよ!!!」
「いた、痛い!!こんくらい消毒液ぶっかけて安静にしてれば治りますよ!!」

だから大人しく目を光らせる魔法研究しようと思ってたのに

「縫った方が治り早いだろうが!菌が傷口に入ったらどうするつもりだ!?」
「いっ…!そん時には病院行きます」

ふんっと胸を張る

「遅えよ!!!」

シャークが怒鳴った振動が手に伝わり、傷口が痛む

「〜〜〜〜〜!!も…やだ…触んなよぉ」

泣く気も無いのに痛みで涙がこみ上げ、喋る声も震える

「…はあ。道具持ってくるから、逃げんなよ」
「ぅ……はい」

シャークが部屋を出ている間に、床に落ちた血とドアノブの血を拭き取った
程なくしてシャークが戻ってくる

「ほら、腕出せ」
「………ほんとに縫うんですか?」
「治療道具揃えたのに縫わないわけないだろ」
「うー……」

渋々腕を差し出した


















「どーもありがとうございましたー」

治療終了後、ぶすっとお礼を言う

「おい、それが人に礼を言う態度か?」
「いだっ!」

デコピンされた

「だって!…シャークさん寝るトコだったのに仕事増やしちゃったし」
「…そう思うなら最初から素直にみせとけ」

そう言うとシャークはキョトンとし
今度は優しく頭を撫でられる

「っていうか、なんでばれたんですか?」
「あ?ああ、軽く壁にぶつけた割りに痛そうな顔してたのと
すぐ左腕に手を当ててたからな。は何で怪我したんだ?」

うーん。言い辛いなぁ…

「え。えーと……自分で切りました」
……なんだと?

さっきの鬼のような顔になった

「ぎゃあ怖い!!っじゃなくてわざとじゃないんです!」
「説明」
「う…一人で結界魔法の練習してて、ほんとに張れてるか分かんなかったので
試しにナイフ数本投げてみたら弾き返ってきて…ざっくり」
「〜〜んのアホ!気ぃつけろ!!」

これには反論出来ないので素直に頷く

「分かりました!今度から上手く隠します」
そっちじゃねえよ。怪我したらすぐ来い」
「嫌です」

私がそう言うと、シャークは治療した腕に軽く触れて

…抜糸、自分ですんなよ?」

と言ってきた

「……チッ」
「やっぱりか!お前今日から完治するまで病院に泊まれ」
「…え。でも着替えとか部屋とか…」
「着替えは用意してやる。部屋は俺の部屋だ」
「…いやそこまでしなくても…」
「見てないと来なかったり勝手に抜糸したりするだろうが
日中は自由に行動して良いが、完治するまでは居てもらうからな
…無断で帰ったらお前の家潰してやる」
「そこまでするんですか!?」




というわけで、お泊まりする事になりました

今日の教訓
シャークは怒らすと超怖い