一生封印しとけば良かったのに…!!!






 おとこん 18






 酒場にてロベルトの姿を探す
 と、見知った銀髪が見えたので声をかける

「…なんでスチュアートが酒場にいんの」

 一人で。しかも酒飲んでへろへろに酔っ払ってるし
 …アルコールに耐性付けようとしてんのか?

「さっきまで仕事だったんだ…う。気持ち悪…」

 スチュアートは口に手を当てて俯いた

「もー!下戸のくせに無理すんな!!」

 背中をさする

「うるさい!無理などしていない!!」
「してんだよ。水飲め。それともトイレ行くか?付き添ってやるけど」
「いらん!」

 スチュアートの世話をしていると

「〜会いたかったぜ〜」

 なんでそっちにいるんだよー
 とロベルトにガバリと後ろから圧し掛かられる

「うわっちょ、ロベルト重っつーか酒臭!!!」
「なあ、何で最近カジノ来ねえの?」

 ギュッと腰に手を回され頬ずりされる
 最近ずっとこんな感じだ。
 酒飲むと幼児化するとか無かった筈なのに…

「そんなのカジノに頼らなくてもお金稼げるからに決まって…」
「じゃあ俺に会いに来い」
「たまに本読みに行ってるだろ?」
「もっと来い」

 さっきより激しく頬ずりされた
 ちょ、何この子供 超 U ZA I ★

「どんだけ酔ってんだよ!離れろ。
 私は今スチュアートの世話で忙しいんだ」
「あー大丈夫だって。その内治まるから」
「なんでお前が言うんだ!スチュアート?ほんとキツかったら言えよ?」
「うるさいうるさい!私に構うな!!」

 シッシッと手でおいはらわれる

「ほら平気っつってんじゃん。」

 ずるずるロベルトに引っ張られ別の席へ移動させられた
 膝の上に座らされ肩に顎を乗せられる

「だからお前が言うな。あといい加減離れろ」
「嫌だね」
「っお前なぁ!」

 私はお気に入りのぬいぐるみか何かか?

 軽く殺意が芽生える

 っと、駄目駄目。力入れると怒られる
 平常心平常心

「っつーか、消毒液のにおいがする」
「怪我したからな」
「でもちょっとし過ぎじゃねえ?」
「それは…今日一日、病院にいたから…」

 ハァ、と溜め息を吐く

 朝のアレとメイズの説得で今日は疲れた…

「…なあ、病院で何かあっただろ」
「っ無い無い!何も無い!!」

 ブンブンと首を横に振る

「ふぅーん…(何かあったな)」
「それでさ、ロベルト」
「ん?」
「怪我の関係で、今日早めに帰らなきゃいけないんだ」
「そんな酷えの?」
「や、そうでも無いけど。10針縫った位だし」
「酷えじゃん。」
「そう?」

 私にとって
 酷い=身体に後遺症が残るor命の危険レベル だからな。
 出血はしたけど神経は無事だったから酷くは無いと思う

「っていうかロベルト、酔い醒めてるだろ。離れろ」
「…醒めて無ぇよ」
「嘘つけ!スキンシップ自重し、ろ!!!」

 そう言ってロベルトの腹に肘鉄を喰らわせる
 フフフ。椅子の上だから避けられまい!

「ぐっ!!」

 腕が緩んだ隙に抜け出す

「ってー…もうちょっと手加減しろよ」

 腹をさすりながらロベルトに文句を言われる

「有力者相手に手加減できる程強く無いんだよ私は。その前に抱きつかなきゃ良いだろ」
「あ。無理」

 手を横に振られ即答で否定された

「テメェ…!!!!」
「だって俺お前の事好きだし」
「はいはい『チュウできるくらい』ね。そろそろそのネタから離れろ」
「…最近赤くなんねぇな。つまんねー」
「お前が何回も使うからだろ!?しつこいわ!」

 いい加減言われ慣れた
 人とは慣れる生き物なのだよロベルトコンチクショウめ!

「っと。それよりはいコレ」

 今日は用事があって呼び出したのに、ロベルトの激しいスキンシップで忘れるところだった
 手のひらサイズの紙袋をロベルトに突きつける

「?なんだよ」
「カフスボタン。やる」
「は?なんだよいきなり」
「酔っ払って泊めてもらった時の礼がまだだったろ?本代も出して貰ってるし。
 カフスボタン欲しいって言ってたから、作ってみたんだけど」
「……これが作ったのか?売り物じゃなくて??」

 ロベルトは袋からカフスボタンを出してまじまじ見る
 普段の服装の色合いから、銀じゃなく金で作った。

「うん。金でトランプのモチーフって結構時間かか――」

 全部言う前に抱っこされた

「え、ちょ、ロベルト!?」

 あれ、もしかしてまだ酔ってた?

「ありがとな!大事にする」

 満面の笑みで見上げられる

「…おう。で、降ろしてくんない?」
「駄目。俺んトコ持って帰る」

 この状態で!?
 っじゃなくてそれは不味い!!

「いや、これから病院に行かなきゃだから」
「この時間にか?朝とか昼で良いんじゃねえ?」
「駄目なんだ!早く、早く戻らないと…!!」

 お父さんシャークが迎えに来てしまう!

「戻る…?入院してんのか?」
「ううん。昨日の夜からシャークさんの部屋に泊まってる」
「………へぇ」

 ぎゅっとロベルトの腕の力が強まった

「?ロベルト…?」
「なぁ、。シャークに何された?」

 下からじぃっと見られる

「…なんもされて無いって」
「顔赤くなってるからな。ぜってー何かされただろ」

 くそ、何でだっこされたまま問いただされないといけないんだ

「えー…と。に、にらめっこ?」
「は?なんだそれ」
「にらみ合って笑った方が負けっていう遊び」

 今回は私の半泣きで終了したけど

「それで何で照れるんだよ」
「顔、近かったから」
「どんくらいの距離だったんだ?」
「………もう降ろせ」
「答えるまで降ろさねえ」

 仕方が無いので手で距離を表現した

「こんくらい」
「近っ!!っつーかこれ口付いてんじゃ」
「付いてない。降ろせちゃんと言ったんだから」

 ロベルトは渋々ながら降ろしてくれた

「…お前、俺が顔近付けても照れねぇくせに、シャークだと照れんのかよ」
「シャークさん普段ロベルトみたいに顔近付けたりしないもん」
「………チッ」

 なんか物凄く不満気な顔でこっち見てるんだけど
 しかも舌打ちしたし

「じゃあもう病院行くから」
「…待った」

 気にせず出口へ行こうとしたら行く手を阻まれズイッと顔を近付けられる
 距離にして拳一つ分

「何?」
「これ、ほんとありがとな」

 どこからともなくカフスボタンの入った袋を目の前に出す

「ああ。付け具合が合わなかったら調整するから言えよ」
「わかった。…でさ、」

 ロベルトは自分の口を指差し、ニッコリ笑って

「『おやすみのチュウ』してくれ」

 と言った

「……は?」
「酔っ払った時はしたぜ?『おやすみのチュウ』」
「問いただした時そんな事一言も言ってなかっただろ!?」
「だって、酒場の事しか聞かなかっただろ?
 俺の部屋であった事は聞かなかったじゃねぇか」
「………確かに」

 ボッと顔が赤くなった

 確かに詳しく聞かなかった私にも責はある。
 だが、今まで言わなかった物を今更言うのは卑怯じゃないか?!
 …金輪際誰かと一緒の時にお酒は止めよう…
 飲む時は一人!
 酔っ払った私のアホ!
 頭打ちまくって天才になれ!!!

「って事で、してくれ」
「む、無理!素面で出来るわけないだろ!?」

 覚えて無いけど、酔った勢いというやつだ

「出来る出来る」
「無理っつってんだろ!」
「しないと通さねえぜ?」
「〜〜〜〜くっ!!!」





 ちゅっ


「…そこ口じゃねぇけど」
「うっさい!おやすみチュウはデコって相場が決まってんだよ!!」

 もう顔はこれ以上無いくらい真っ赤だ。
 っていうか、今なら恥ずかし過ぎて死ねる

「くそーもうしないからな!ばかっ!!」
「…ま。素面のからって事で、次回に期待だな」
「もうしねっつってんだろ!!!!」

 私の抗議を無視してロベルトは普通に話題を変えた

「あ。そうだ、シャークに言っといてくれよ」
「…何?」

 ブスッっと返事をする

「『お前の参戦カーティスにも言っとく』ってな」
「??なんかゲームでもしてんの?」
「まぁ、争奪戦みたいな?」
「へー」




 戻って伝言を伝えるとシャークは微妙な顔になった