もうちょっと油断しないようにします






おとこん 20






お泊り四日目の夜
目の前にはシャーク
背中には壁の感触
両サイドの壁にはいつかの様に手が付かれている

、今日は一体何した。」
「……ぅ」
「言え。どうしたら塞がりかかった傷からあんなに出血した上に、骨にヒビまで入るんだ」

はい。私、縫った傷から大量に出血し、その流れで左腕の骨にヒビが入ったので現在怒られてます
ちなみに処置は終了してます。

「…………も」
「も?」
「物凄く激しくこれでもかこれでもかこれでもか!!!って位に傷口強打して、
その傷口への衝撃が強すぎて骨にヒビ入りました」
「……………………………ははっ」

長い沈黙の後に笑い声が響く

「ははは…お前、治す気無ぇだろ?無ぇよなぁ?他の怪我までこさえてくんだもんなぁあ??

例の超良い笑顔が出た
でも今回は額に青筋が浮いて威圧感と殺気たっぷりの鋭い眼光で見つめられ、病院内で殺されそうな勢いです
今までで一番死と隣り合わせな予感

「ヒィィごめんなさいごめんなさい!!!治す気超あります!
それはもうシャカリキにあります!!俄然治す気満・々・です!!!」

その場にしゃがみ込み土下座で思いっきり謝る

プライド?

なにそれどの大陸の言葉???

「で?理由はなんだ」
「あの、魔法の練習で…威嚇用魔法が暴発しちゃいまして、
その衝撃で腕を思っきし岩の尖ってる所で打ちつけました。」

しばらくのた打ち回ったのは秘密だ

「またか。お前もう魔法使うな」
「ぅ…それは…」
「全部って言ってるんじゃない。今回みたいなのは使うなって言ってるんだ」
「…はい」
「しばらく外出禁止。いいな?」
「はい…心配かけてごめんなさい」
「本当にな。ちったぁ大人しくしろ」

ついに外出禁止令が出てしまった






外出禁止令から数日後、夕方



「…だからなんで俺のベッドで寝ようとするんだよ。おい、起きろ。
今寝たら夜に寝れなくなるだろ?」

ウトウトしている所を、自室に戻ってきたシャークに揺すり起こされる

「んー…だって今の時間から布団敷いたら…邪魔に、ふあぁ…なるじゃないですか…
寝る子は育つんですー今寝てても夜も寝れますー」

布団に潜り込もうとしたが、布団を捲られ阻止された

「睡眠の取り過ぎは良く無い。つーか、育ってどうする気だ」
「シャークさんの背を超えてみせます」
「寝た位で10cm以上も伸びねぇよ!アホな事言ってねえで起きろ!!!」
「嫌です」

くるりとシャークに背中を向ける

「……俺は起きろって言ったからな」
「?」

いきなり首筋から背中にかけてをツゥ…と撫でられた
ビクリと身体がはねる

「っ!」
「早く起きねぇと…」

今度は背中から首筋を撫で上げられ
ぞぞぞっと背中が粟立つ

「ひぁ…っ!ちょ、起きます!起きますから!!!」

ばっと起き上がりシャークから距離を取る

「なんっつー触り方するんですか!!」

あぁあまだ背中がざわざわするっ!

「俺が『起きろ』って言ってる内に起きなかったが悪い」
「それにしたってこの起こし方は問題ありですよ!」
「じゃあどんな起こし方だったらすぐ起きるんだ?」
「…声かけるとか揺するとか」
「今やって起きなかっただろうが」
「………あ。馬乗りになると起きました!」
「…誰が」
「ロベルトが」

ライルがロベルトの部屋に来た時に上に落ちたら結構早く起きたし

「馬乗り良いんじゃないですか?」
「……
「はい?」
「一応言っとくが、俺がお前にやる事を前提で提案しろよ?」
「……………。今の無しでお願いします!」

顔を青くして提案を撤回した

駄目だ。そんな事されたら…

「そんな事されたらシャークさんに潰される!!」
「そっちかよ!!違うだろ!?別の問題発生するだろ!??」
「へ?……体格的に無理がある?いや、でも乗れない事は無い…」
「この前警戒心持てって話したのもう忘れたのか?」

眉間にしわを寄せてシャークが言ってきた

「いいえ?でも、嫌がるのを無理矢理…なんて事しないでしょう?」
「………」
「だから――」
「なぁ、お前俺の事信用し過ぎだ。俺だって男だぞ?女のお前を襲う事だってあるかもしれないだろ」
「それは絶対無いですね」

キッパリと言い放つ

「…どうしてそう言い切れる?」
「だって考えてもみてくださいよ。そんな事起こるならとっくに起こってますよ?
私がシャークさんのベッドに潜り込んだ時だって何も無かったし、押し倒された時だって
顔を近付けてきた時だってあなたは必要以上に触れてこなかった。毎晩同じ部屋で寝てても同様です。
何もしてこない。だから馬乗りされても平気です――潰れますけど」

そう言ってニッコリ笑う

「……馬鹿だアホだと思っていたがここまでとは…」
「失礼ですよ本人を目の前に!!」
「褒めてんだよ」
「全然褒めてるように聞こえなかったんですけど!どこが?どこら辺が褒めてる部分??」
「“馬鹿だアホだ”の部分だが?」

全然褒めてない!!

「……私を襲わない可能性として、挙げれる物がまだあります」
「なんだ?」
「シャークさんが男好きで女の私には興味が無いか、もしくは性欲が枯渇――」
がそんっなに手を出して欲しかったとは知らなかったぜ」

額に青筋を浮かべたシャークにガッと足を引っ張られ、あお向けの状態にされた
その上に馬乗りになるように乗ってくる

「ぎゃあ!うそ!嘘です嘘!!シャークさんの忍耐力は大陸一素晴らしいです!!!」
「そうか?でも俺の忍耐力もそろそろ尽きたんでな…覚悟しろ」
「っ!!」

ギュッと目を閉じる
しばらくしても何も起き無いのでそろりと目を開けると
シャークがじっとこちらを見ていた

「?」
「…なぁ、俺に対してあんまり抵抗しねえのはなんでだ?
カーティスやロベルトには刃物向けたりするだろ?」
「え…お医者さんに怪我させて、受け持ちの患者さんに何かあったらどうするんですか。
私お医者さんじゃないし、頭良く無いから責任取れません」

メイズが悲しむし、他の患者さんだって困るだろうし…キズモノにしたく無いんだよな
まあそう簡単に怪我なんて負わせられないだろうが

「……他人より自分の心配しろよ」
「さっきも言いましたけど無理矢理最後まではしないと思ってますし…」
「…」
「更に言うと今の状態からして最後までするという可能性は全くの0です。仕事がまだあるでしょうし、
シャークさんは私を襲ったりしないっていう自信がありますので」
「………」

言葉を紡ぐごとにシャークの表情は何とも形容し難い不思議な表情になっていく

「あとですね」
「まだあんのか」

ありますとも。

「一番の理由は、心配して本気で怒ってくれるような優しい人が、襲ってくるなんて私には考えられないから。
さっきだって左腕に負担かけないように、左足を右上に引っ張ったでしょう?」

微笑みながらそう言うとシャークは目を見開いた

「以上です」
「……はほんっっとに馬鹿だな」
「そんな真顔で言われると本気で凹むので止めてください」

改めて超真顔で馬鹿って言われた

「まぁでも、私スキンシップ好きな方なので、ケンカしたりこういう感じで馬鹿やったりって凄く楽しいです」

だから普段アホだ馬鹿だと言われるんだろうが、それはいつもの事だし
後先考えられないのも仕様だしな…

「だろうな」
「分かってるのなら言わないで下さいよ…で。そろそろどいて下さい」

そう言うとシャークは少し考えた後、首筋を撫でてきた
慌てて手を掴んで止める

「ひゃ!?ちょっ完全に気がそがれてたでしょ!?」
「いや、性欲が枯渇してるなんて言われると男の面子ってもんが…」
そんな面子捨てちまえよ!わっ背中は、背中は止めてっ!」
は俺にはあんまり抵抗しないって良い事聞いたしなぁ?」

ニヤリと悪い笑みを浮かべるシャーク

「い…いーーやーー!!!くすぐったいから!!ぞわぞわするからーーーーーー!!!!!」





その日メイズがシャークの部屋を訪ねると
妙にぐったりしたと妙に上機嫌なシャークが居たという