たまにはこっちから近付いてみる……と、後悔する






おとこん 21






病院の庭の木陰で本を読んでいると、身知った人物が近付いてきた
本から目を離し、視線をあわせる


「おー、良くここが分かったね。仕事は?イディット」

スラムに住んでて、しかもカーティスの近くにいるとどうしても知り合いになる暗殺者ギルドの面々。
アリクともユージーンとも仲が良いけど、イディットが一番仲が良い

「これが仕事だ。でな、カーティス様が」
「私は会いたく無いから会いたいなら自分で来いって伝えて。よろしくー」

ヒラヒラと手を振ると、イディットが情け無い声を上げる

「遮るの早ぇよ!!!しかも俺がそんなん言えるわけねぇの知ってんだろ!!?
なぁ、頼むから来てくれよ、が来てくんねぇと俺が死ぬ!!」
「私の為に死んでくれて有難う。イディットの事、一時間くらいは忘れない」
「短ぇ!!」
「はは。冗談だよ…一日くらい?」
「っこの通りだ!頼む!!!」

パンと手を合わせて頼み込んできた

「嫌だ。自宅の近所とはいえ、暗殺者がゴロってる(ゴロゴロ居るの意)場所に行ったら逃げらんないじゃん。
空いてる暗殺者全員で取り押さえに来るじゃん。この前お前も殺る気満々で取り押さえに来たじゃん。
それとも何?今回は手負いの私を護ってくれんの?無理だよね??イディットはカーティスの部下だもんね??
我が身可愛さに私を差し出す為に今もやって来たんだもんね???」

ジト目でイディットを見ながら一気に喋る

「ぐ…っ」
「はい、お帰りはあちらでーす。薄情者はさっさと退散して死んで来い」

本に視線を戻し、シッシッと追い払った

「……無理にでも来てもらう」
「…じゃあさ、シャークさん説得して?」
「?何でだよ」
「行きたく無いのもあるけど、外出禁止なんだよ。病院の外は駄目なんだ。
この前物凄く良い笑顔で怒られて心配かけちゃったから、もう怒らせたくない。
だから、イディットがシャークさん説得する事が出来たら行くよ」
「おい…俺があの旦那相手に口で勝てると思うのか?」
「はっはっはー、思わない」

ニンマリ笑う

「………お前、本気で来たく無えんだな」
「だってろくな事無いじゃん。今の腕の状態だとあんまり抵抗も出来ないから、諸々プラス
確実にあのきわどい服いっぱい着せられるだろ?」

コスプレっぽいのもそうだけど、
無駄にスリット入ったヤツとか、超ミニとか、やたら胸強調したヤツとか、微妙にスケスケのヤツとか
なんかあり過ぎて全部言え無いけどそんな感じのヤツ

「う…そ、んな事、無ぇぞ?」
「言葉に詰まりながらじゃ説得力無いよ。でも外出禁止ってのは本当。…来てくれたのにごめんな?」
「……はぁ」

イディットはガックリと肩を落とした

「カーティスにも一応『ごめん』って伝えといて。」
「…分かった。早く治せよ」
「うん、ありがとう」






そして数日後、朝
私の目の前には小さな箱が一つ

「なんですかこれ」
「依頼品だ。カーティスに届けて来てくんねぇか?金はもう貰ってあるから回収しなくて良い」

このタイミングでこの頼み…
ここ数日、変に忙しそうだった理由はこれか!!

「……じゃあ左手は絶対使わない事を条件に、武器の装備及び戦闘許可をください。」
「は?届けるだけでなんでそんな」
「スラム街ですよ?この条件が呑めなければ、折角の外出ですがお断りします」

ちなみに私の強さのランク、健康な状態で幹部以上有力者未満
今は左手使えないから多分どっこいどっこいと踏んでいる

「なので許可を下さい」
「……はぁ。無理すんなよ」





で。現在カーティスを訪ねてるんだけど
私ちょっぴり怒ってます

「おや、。確か外出禁止ではなかったのですか?」
「やあユージーン。ちょっとね」

ニコニコッと対応する

「ねぇ、今カーティスってこの部屋にいるよね?」
「ええ、そ――」
っらぁ!!!!

カーティスのいるという部屋の扉に、思いっきり回し蹴りを喰らわす
ドゴンッ!!と激しい音を立て扉が倒れる

!?なんて事し」
「なんだい?死にたいのかい?だったら首晒せや掻っ切ってやっからよ

殺気を垂れ流しながらチャッと投げナイフを指の間に挟み、なんちゃって鉤爪を作る

「…なんでもないです」
「そうだろ?ノックしただけだもんな?」
「……(そんなノック見た事ありませんけど)」

「失礼しますカーティスコノヤロー!お届け物です!!!

そう言って私は部屋へ入っていった




+++あとがき+++

また長くなったので分けました
っていうかカーティス出て来ないってどう言う事だOTL