が、頑張るぞー。オー
おとこん 24
「確認するわよ。今回の標的は?」
「タイロン(昼)、ロベルト(3時頃)、カーティス(夕方)、シャークさん(夜)の四人」
一日で回れる限界人数だよ…
というか、絶対一日で終わらせてやる!!何日もこの格好は絶対避けたい
「よろしい。何があっても標的全員、回りきりなさいよ?」
「何があってもって…なにかあるの?」
「……。部屋に連れ込まれない様に注意しなさい」
「??それは無理よプリンセス。最後のシャークさんは自室よ?今日は忙しい筈だから」
「じゃあベッドには絶対近付かないようにして」
「えー…なんでだよ?」
部屋へ戻ったら休む気満々だったので、不満が漏れる
「――素が出てるわよ」
「おっと…コホン、失礼」
「あんた今の格好別人なんだから、なりきりなさい」
「…そんなに変わった覚えはないんだけど」
「名乗らないと、きっと分かってもらえないわよ?」
「そうなの?じゃあ本気でなりきった方が、私だって分かりにくくなるって事??」
「ええ。だからなりきりなさい」
「分かったわ」
「でもカナデだって分かったらきっと、口調戻せって言うだろうけどね」
何だって!!?
「ちょっと!?じゃあ元の口調で良いんじゃ…」
「駄目。女の方が面白いから」
「………左様でございますか…」
「あとこれ、取れた時に使いなさい」
と口紅を渡された
「ぇ。そんな頻繁に取れないよ?」
「これから身を持って体験すると思うわ」
「???」
と言う訳で、まずはタイロン
斡旋所には居なかった
昼時なので大衆食堂だろう
食堂に顔を出すと―――居た。
すっとタイロンに近付く
「こんにちは、タイロンさん」
「あ?………誰だあんた」
「私の事、分からないかしら?――出会い頭にあんなに激しくしたくせに」
ジト、と睨みつける
タイロンは気付かない
…わかんないもんなんだな
「知らねえよ」
「そうか…じゃあもう遊ばなくて良いんだな」
私だと分かるように声と言葉遣いをいつもの調子に戻し、チャキッと投げナイフを取り出す
「は?―――っお前!か!!?」
ガタンッと椅子を倒し立ち上がるタイロン
「ハッハッハー!!!私だと分からなかったみたいだなタイロン!!」
「…おま、女みたいだぞ?」
「女なんだよ。ふざけた事言ってると本気で遊ばないわよ!」
口調を『女』に戻すとタイロンは顔をしかめた
「その言葉遣い止めろ」
アイリーンが言った通りだ。ほんとに止めろって言ってきた
「駄目よ。プリンセスにこの格好の時は『女』でいなさいって言われたから」
「お嬢?なんでお嬢が――」
「私がこういう格好したら、男友達(有力者達)が私を『女』として範囲内かみる実験をしてるの。
プリンセスが“一人で行きなさい”って言ったから、回ってる途中。っていうか、タイロンが一人目よ?」
「…………マジで?(お嬢!その実験こいつには無謀過ぎる!!)」
「ええ。私がこんな格好した所で結果は目に見えてると思うんだけど…って事で、今日はこの言葉遣いで我慢してね?」
「…それとこれとは話が別だ。口調戻さねえと、俺にも考えがある」
「は??」
キョトンとしていると、ひょいっと担がれる。
…また俵担ぎされたし…
「ちょっとタイロン!?担ぎ上げて何する気なの!!?」
「そうだな…何して欲しい?」
「考え無いんじゃない!」
抗議すると、するりと足を撫でられた
「ひっ…ッ何すんのよ!」
「お前、こういう触られ方とかくすぐりに弱いんだって?」
「…誰に聞いたの?」
「ちょっとな。にしても敏感だなー」
ロベルト?カーティス??それともまさかの、まさかのシャーク???
……いや、シャークは無いな…堅実な商人だし。だとするとロベルトかカーティス…
可能性の多い方はロベルト、かな。行った時に問い詰めてやる
「〜〜っの破廉恥男!放しなさいよ!!」
「酒場で××とか×××とか言ってた奴に破廉恥なんて言われたくねえ。」
「あれは悪口だから良いの!というか、いつの話よ!!時効でしょ!?」
「時効なんかじゃねえよ!まだ影で噂になってんだぞ!?大体、悪口のボリューム大き過ぎんだよ!!!
周りの客ドン引きしてただろうが!」
「ドン引きされればいいわ!!周囲の人や部下に可哀想な目で見られれば良いのよ!!!!」
「ははは。よし、宿行くか。」
「なっ!?セクハラ!私、あなたをそんな子に育てた覚えは無いわ!!」
よよよっと泣く真似をする
「育てられた覚えは全く無え。」
「〜〜〜っタイロンは×××で××××××って言っただけじゃない!」
「だから大声で言うなって言ってんだよ!!」
「そっちこそ大声じゃない!さっさと放しなさいよ!!」
「――だったらさっさとその言葉遣い止めろ」
いきなりの不機嫌そうな声に、ピタリと動きを止めタイロンを見る
「だから…今日は我慢してって」
「黙れ。止めねえと本気で宿行くぞ――似合わねえんだよ」
似合わないと言った時のタイロンの顔は、心底嫌そうな…お気に入りの玩具が無くなった小さい子供みたいな顔だった。
…ほんとに嫌なんだなこの言葉遣い
「……ははっ…わかったよ、降参。降ろしてくれ」
口調を戻すと、素直に降ろしてくれた
「なぁタイロン」
「なんだよ」
嫌そうな顔で『似合わない』…つまり、いつもの私の方が良いと言ってくれている
「やっぱ私、お前の事大好きだ」
「……るせえバーカ」
頭をガリガリ掻いて、視線を外される
「それじゃ、他の奴ん所行くから」
「―――。」
「何?」
「その格好で油断すると確実に喰われるぞ」
「は?いやいや無い。無いよそれは」
「ハァ…こっち来い」
テーブルに軽くもたれかかったタイロンに手招きされたので素直に近付くと、ぐいっと腰を引き寄せられ
密着した形になる
「っ、タイロン?!」
「想像しろ。男の前に、普段全く肌を露出しない女が、いきなりこんな格好で現れたらってな」
真面目な声で言われたので、そのままの体勢で考える
つまり、普段全然露出のない私が、いきなりこんな格好で皆の前に現れたらどうなるか
「えーと…驚くんじゃないの?」
「驚くだけだと思うか?」
「うん。プリンセスも別人みたいって言ってたから」
それ以外は別に思いつかない
「…惚れた女だったらどうだ?」
「あ。それだったら女の人危険だと思う」
「だろ?そういう事だ」
「そういう事って…あのさ、タイロン」
「なんだ」
「惚れた女だったらの話だろ?私は当てはまらないぞ??」
「チッ」
え。何で舌打ち?
「お前が鈍臭えのが悪いからな」
そう言うとタイロンは私の背に片手を添えて、首に顔を埋めてきた。そして―――
「その格好だとがこういう事されるっつってんだよアホ!!!本気で気ぃ付けろ!!」
バッと身体を離し、タイロンは去っていった
私はと言えば、いきなりの事に声も出ず放心状態。
人間って吃驚し過ぎると動けなくなるし声も出ないって事を身を持って体験した瞬間でした
「…え、えーと…今、軽く舐められて甘噛まれた…よな?」
噛まれたところに手を当てる
ボッと顔が赤くなった
「く…口で言――って、私が分からなかったから、されたんだよな…」
マジで?これからこんな事されるかもしれない格好で、皆のトコ行くの?
だからアイリーンも部屋に連れ込まれない様にって言ったの???
うーわー…行きたくねぇー
でも『行く』って約束しちゃったし…気を付ければ大丈夫…だよね?
姿見せてちゃっちゃと帰れば……帰れるかなぁ……ヒールだといつもより動きが遅くなるよなぁ…
結果報告メモ その1
タイロンには口調を元に戻され、気を付けろと警告されました(実演付きで)