んでは最後、シャーク…なんだけど。
やっぱまだ部屋に戻ってなかった
あ゛ーー。疲れた…とりあえず休みたい
「あ…でもこの格好でベッド近付いちゃ駄目なんだっけ…」
うーん…夜だけどまだシャーク帰って来てないから机で仕事するかもだし…布団敷き辛いなぁ…化粧落としてないし…
あ、そうだ。端に積んである私の布団の上で寝れば床よりはマシだ!フード被ってローブに包まってしばらく寝とこう
「おいっ起きろ!何で布団敷いてないんだ!!」
「ふがっ!?」
ローブ越しに鼻をつままれた
一気に目が覚める
「うっぐ!…あぅ…、シャークさん、お帰りなさい」
起き上がるとぱさりとフードが脱げる
「――その化粧どうした」
「…あ゛。えーと、プリンセスと一日実験をしてたので」
「実験?」
しまった。素で対応してしまったよ私…
格好はローブで隠れて見えてないみたいだけど
「まぁ、なんにせよ落とさねえと肌が荒れるぜ?」
「分かってますけど…ちょっとまだこの姿でやる事があるので」
キスマーク付いてる状態でローブ脱ぐの怖いんだけど…どうしよう
っつーか前と後ろに付けられるって相当だよなー私
「う…シャークさん、怒らないで下さいね」
「…まさか…お前また怪我したのか」
きゃあ青筋が浮いてる!
「ひっ!いくら私でもそんな恩知らずな真似は何度もしません!!」
「じゃあ何した」
「……」
「?」
…ローブを脱げ私!覚悟を決めるんだ!!!
意を決し、ぱさりとローブを床に落とす
「っこの格好で一日行動してロベルトとカーティスに吸われました!」
ぎゅっと目を瞑り雷が落ちるのを待つ
「………?」
そろりと目を開ける
「あれ?シャークさん?シャぁぁ〜クさ〜ん???」
目の前で手を振ってみるが反応が無い
というか、焦点が合っていない
い、今の内に逃げようかな…だってコレ嵐の前の静けさだよね?
そ〜っと出口に向かうと
後ろからガシィィッ!と勢い良く痛い位に頭を掴まれた
「ぃだっ!!?」
ギチリとシャークの指先に力が込められる
「うぉっつ!?痛い!痛い痛いいたいぃぃぃ!!!」
「…俺は何度も言ったよなぁ?警戒心持てってよぉ」
その静かな、けれども低い低いドスのきいたその声に、じょわっと背筋が粟立った
ふ、振り向いては…振り向いてはいけない!
あぁぁあでも頭を掴んでいる手がグググっと私の首を回そうとしているぅぅ!!
「ちょ、シャークさん落ち着いてくださ」
「俺は落ち着いてるぜ?今までに無ぇ位なぁ」
ぐりんと首を回された
う…ぅうぅうそつきいぃぃー!!!滅茶苦茶怒ってるじゃん!!!
涙目になりながら異議を唱える
「い…異議ありぃ!警戒心持ってても防げない事もありますっ!それに、私にしては頑張った方ですよ!?」
きっかけはタイロンだったけど
「そんな格好で男に近付いてキスマーク付けられてか?」
「ぅ…だって実験する為には近付く事は必要で…でも警戒はいつもよりしてました。格好が格好ですし、
プリンセスにも“部屋に連れ込まれないように”って言われてたので部屋には入ってません!!」
「………」
「い、今だってシャークさんのベッドじゃなくて、私用の布団の上で寝てたでしょ!?」
「…確かに」
「でしょ!!??今日頑張ってるでしょ!!?だから手ぇ離してください!!!」
プリンセスに言われてなかったら確実にベッドに寝てたけど
怖いから言わないでおこう
本気で泣く一歩手前でシャークの手から開放された
「ところで実験ってなんだ?姫さんが絡んでるようだが」
「シャークさんも実験対象です。それで質問なんですけど、私って『女』として“範囲内”ですか?」
「―――は?」
「私は『女』として“範囲内”ですか?この格好、私が“範囲内”だって証明する為の実験なんです」
「…成る程な」
「で、シャークさん。私は“範囲内”ですか?」
「ああ。っつーか範囲内じゃなけりゃ、俺が警戒心持てとか言わねぇだろ」
「それもそうですね…んーじゃあ後はタイロンだけか…会い辛いなぁ」
「何でだ?」
「だって今日噛まれ――すみません口が滑りましたので是非とも忘れてください」
シャークの顔がまた怖い
「あいつにも何かされたのか」
「…タイロンの場合は私が悪かったので、素直に怒られます。どうぞ」
頭を差し出すと、しばらくしてから撫でられた
「え…シャークさん?」
「反省してるんだったら良い」
………
「シャークさんって飴と鞭の使い方上手いですよねぇ…ちょっと抱き付いて良いですか?」
しみじみ言った瞬間、私の頭を撫でていたシャークの指にミヂリと力が入る
「いだぃっ!!」
「お・ま・え・は!そこが警戒心足んねぇんだよ!!!」
「そ、そんな事言ったって、シャークさんが優しいのがいけないんです!!
そんな風に優しくされたら抱き付きたくなるでしょ!?」
「なんねぇよ!!お前単純過ぎる!」
「失礼な!私のどこが単純ですか!!」
「全部。」
ぐっ!!即答…だと!?
「そんな酷いっ!!これでもたまには頭使うのにぃ!!!」
「頭関係ねぇよお前の単純さは。性格だ性格っつーかたまにしか使ってねぇのかよ」
「身の危険を感じた時は流石に使いますよ?今日だってロベルトに…あ」
そうだ。今頼んじゃえば良いんじゃね?
「あの、商人としてのシャーク=ブランドンさんにお願いがあるんですけど」
「?なんだ急に」
一呼吸置いてから言葉を紡ぐ
「ドぎついエロ本を大量に取り寄せてください」
私が真顔でこの言葉を発した瞬間、シャークは凍りついた
「―――悪い、忙しかったせいか俺の耳がどうかしちまったみてえだ……もう一回言ってくんねえか?」
「エロ本を」
「断る」
即行で断られる(まぁ正直予想はしてた)
「っ困りますっ!!!」
「いや困るのは俺だからな!?メイズに知られてみろ、俺は死ぬっ!!!」
「大丈夫ですよ男は皆エロい生き物ですから!!!!」
「お前が男の何を知ってるってんだ!!?嫌だっ絶対い・や・だ!!」
シャークが私から離れようとしたので縋りついて頼み込む
「ばれないようにすれば良いじゃないですか!!!」
「万が一って事があるだろ!!?メイズは思春期なんだぞ!?」
「私の頼まれ物だって言ってくれて構いません!!!」
「それこそショック受けちまうだろ!!っつーかエロ本なんぞそこらの本屋に腐るほど売ってるだろうが!!!!」
「そこらの本屋で買えないようなドぎついエロ本が大量に欲しいんです!!」
「断る!!!大体んなモン取り寄せてどうするつもりだ!!!??お前には必要ねえだろ!?」
「必要だから頼んでるんです!というか、シャークさんってエロ本持ってないですよね。普段どう処理してるんですか?
暇な時に部屋漁ってもみつからなかっ」
ゴッ
「勝手に部屋漁ってんじゃねぇよ!!あと女が処理とか言うな!!!!」
拳骨で頭を殴られた
「〜〜〜っぃいったぃぃ!!!っ取り寄せてくれるまで諦めません!!」
涙目になりながらも私は引き下がらない
「後生ですから請けてくださいよー!!!」
「請けねえ」
「お願いしますシャークさん!!」
「請けねえっつったら請けねえ」
「お金いくらでも構いませんから!!!」
「絶対断る」
「シャークさんだけが頼りなんです!!!」
「断固拒否する」
「なんでも言う事聞きますから!!」
「、嫌だ」
ん?今返答に間があったぞ??
「ほんとに、私に出来る事でしたらなんでも言う事聞きますよ?」
もう一度言うとピクリとシャークの眉が動く
お。これ揺れてんじゃね?
「いつでもご飯作りに来たり、掃除したり、マッサージしたりしますよ?肉体労働でも構いませんし、
貴方が望むのならいつもの鉱石これからはお金払って頂かなくても結構です。元々趣味なので」
「………」
やっぱ駄目…か?
「あと私が出来そうな事って何かありますか?」
「………なんでそこまで必要なんだ」
そこで初めて理由を聞かれた
同時に、ある事に気付く
…今の格好なら 色 仕 掛 け が出来る…!! と
まぁね、色仕掛けとか実際した事無いから大した事出来ないんだけどね。
ぶっちゃけどうやったら良いのか分からん
「――言ったら取り寄せてくれます?」
とりあえずシャークの服の裾を掴み、上目づかいにチラリと見てみた
「…っ!な、内容による…」
ん?効いてる??
案外シャイボーイなのか?これ以上は出来ないけど
「ロベルトの部屋に仕込もうと思いまして。――今日のお礼に」
今の私の顔は、口は笑っているけど目はきっと笑ってないと思う
「…、実は怒ってんのか?」
「いいえ?私はただ、お礼がしたいと思っているだけですよ?あいつ視覚的攻撃には結構弱いのでいけると思うんですよねぇ
元はと言えば、ロベルトがキスマークなんぞ付けてきたからカーティスにも付けられたんですよ。
なので是非ともそのお礼をしたいと思ってるんです」
ニィィっと普段しない笑みで更に続ける
「…フフッ楽しみですねぇ、エロ本見つけた時の奴の慌てふためく様を想像すると…フフフフフ」
「おいキャラ変わってんぞ(内容はアホだが)」
「これも私の一側面です。エロ本以外にもう一つ案があるんですけど、外に連れ出さないと出来ないんですよねー。
しかも下手したら自分の首絞める行為になってしまうっていう」
「そっちはどんな方法なんだ?」
「言いません。怒るから」
「…言え」
「嫌です言いません」
「……言ったらエロ本考えてやる」
ぬぉ!?卑怯な!!!
「…洞窟に連れ出して怪談聞かせまくるっていう案があります」
「………本気か?確実に理由付けて触ってくるぞ」
「ですよねぇ。だからエロ本頼んでるんです」
そう言うとシャークは眉根を寄せて腕を組み、心底嫌そうに
「………2、3冊だったら取り寄せてやる」
と言ってくれた
「っ本当ですか!!?やったぁ!!わーいわーい有難うございます!」
嬉しさの余り勢い良くシャークに抱きついた
「ッ、だから抱きつくなっつーんだよ…」
「あ。急ぎませんからシャークさんが暇な時でお願いします。お支払いはどうしましょうか」
「…はぁ…支払いはいつも通りで構わねぇが…、勢いでも『何でもする』とか軽々しく言うな――襲うぞ」
ちゅっと耳にキスされた
「ッ!!!???!?」
「おらフロ入ってさっさと寝ろ。マジで襲うぞ」
「………はぃ」
結果報告メモ その4
シャークさんには女口調を披露できませんでしたが、耳にキスされました
私は範囲内の様です