私だってこういう時があるんだぞ
おとこん 25
早朝(と言ってもまだ日は出てないので微妙に夜中)、南の斡旋所に向かう。
だってシャークの部屋居辛かったんだもん。全然寝れないし
中をそ〜っと覗き見ていると、後ろから声をかけられた
「何やってんだ?」
ビクゥッと体が跳ねる
「た…タイロン…こんな時間になんで外にいるんだよ」
「仕事してた」
「あー…だろうな」
服の所々に血が飛び散ってるし
「で、なんか用か?」
…私への対応普通だなぁ。じゃあこっちも普通で良いかな
「昨日の事なんだけど」
そう言うとタイロンは若干言葉に詰まった
「…、俺は謝らねえぞ。あれはお前がっ」
「違う違う!謝んなくて良いって!!結局アレだったけど。そうじゃなくてさ、
昨日タイロンって私は女として“範囲内”か?聞くの忘れてたから聞こうと思って」
「どっちかって聞かれたら範囲内だ」
「うっそマジで!?タイロン頭大丈夫か!!?」
「しばき倒すぞ。どうせ他も範囲内だったんだろ」
「え゛。何で知って…」
「あからさまに範囲内な奴いるだろ。範囲外だって思ってるのはだけだ。」
「そうかな…」
っていうか、“あからさまに範囲内の奴”って誰?
「昨日、スチュアートには聞いたか?」
「ううん。昨日はタイロンとロベルトとカーティスとシャークさんだけ」
「だったら不意打ちで聞いてみろ。あいつも多分範囲内だ」
「え、答えてくんないだろ。っつーか『フン、貴様何を言っているんだ。気でも狂ったか』って鼻で笑うぞ絶対」
「大丈夫だ顔に出る。」
「えー?まぁ覚えてたら聞いてみるけど」
無いと思うんだけどなぁ…
「それより、『アレだった』ってなんだ?」
「ん?ああいや…良いんだ気にしないでくれ」
「…おい、まさか俺の忠告無視して襲われまくったんじゃないだろうな」
YES その通りです!無視はしてないけど
「HAHAHA☆そんな訳無いだろ!超余裕だったっつーの!!」
「――知ってるか?お前が嘘付く時な、目があからさまに泳ぐんだぜ?」
ぎくり。
た、確かに今タイロンと目が合ってない
「〜〜っあぁ吸い付かれたさ吸い付かれたとも!!!だから何だってんだよチクショー!!!!」
「逆ギレすんな!っつーか吸い付かれたって…」
「ちゃんと警戒はしてた!でも効果なかったんだようわーん!!!」
ドスンと突進する勢いでタイロンに抱きつく
「っ!?」
「ゴメンちょっとだけ、ちょっとだけ私に癒しをくれ…!!」
最初に忠告してくれたタイロンが今一番落ち着くから
「癒しってお前、俺が癒しって柄かよ」
「だって抱き付いて安心なのってタイロンだけだもん。…だからちょっとだけ」
抱きついたままタイロンを見上げる
「駄目…?」
「…………はぁ」
タイロンは溜め息を吐いたかと思うと、片手でひょいっと私を抱っこした
「うぉっ!?ちょ、タイロン!!?」
「とりあえず中入るぞ」
「…うん。えへへ、ありがとタイロン。ごめんなこんな時間に来て」
ぎゅっと首に抱き付いてお礼を言うと
「…お前はほんとにアホだな」
としみじみ言われた
「え、あれ?なんでそんな返答になるんだ!?」
「俺相手に安心とか言ってんじゃねえよ。昨日の事噛んだのもう忘れたのか?」
「忘れてないけど…あれ忠告だろ?仕方なくだよな?」
そう言うとタイロンは眉根を寄せ、その問いには答えず
「――お前、この状況だと俺に襲われても逃げられねえんだぞ?」
と言ってきた
「何、私の事襲うつもりなの?」
「いや、そうじゃねえけど」
「だろ?じゃあ平気だ。それに襲うつもりなら、普通言う前にやるし」
「………。」
何だその変な物を見る目は
「何だよ」
「学習能力ってもんが欠落してんのか?」
「は!?聞き捨てならん!なんだその失礼な言い草は!!私にだって学習能力ぐらいあるわ!」
「いや、無えだろ。昨日の今日で俺に近付くアホだぞ?!」
「アホ言うな!ロベルトとカーティスに比べたら可愛いもんだ!!」
「………何されたんだよお前…」
「……それぞれに前と後ろ吸われてキスマーク付けられた……しかもシャークさんに物凄い怒られた…うぅっ」
その時の事を思い出して泣きそうになる
「気を付けろタイロン…シャークさん怒らせると一番怖いぞ」
「そりゃ有力者だしな」
そうこうしている内にタイロンの部屋へ到着した
「、そろそろ降りろ」
「…もうちょっと」
「………じゃあ手ぇ離すからしがみ付け」
「ん」
タイロンは私がしがみ付いたのを確認すると剣を外し、私ごとドカッとソファへ座った
「あ…着替えるよな。やっぱ離れ――」
「何かあったか?」
その言葉にピクリと反応する
「――なんで?」
「お前普段こんな行動しないだろ。流石に分かる」
ありゃ。やっぱバレるかこんなにくっついてたら
「…皆の前では普通にしてたんだけど、今まで私、自分は範囲外だと思ってたからちょっと吃驚しちゃって」
「………」
コツンとタイロンの胸に額を当てる
「ほんとはさ、タイロンとも会うの戸惑ったんだ」
「じゃあ何でこんなくっついてんだよ」
「癒しを求めてたってのは本当。こんな時間に此処に来たのは、急にいつもの口ゲンカしたくなったから。
多分落ち着きたかったんだと思う…いつも通りだって」
こうして口に出すと、落ち着いてきたと同時に眠くなってきた
一日の疲れが一気に押し寄せてくる
「だから…きょ…タイロンに……会え……良かっ………」
最後までちゃんと言えたか分からないが、そこで私は寝てしまった
「…?」
見るとは暢気な顔で寝ていた
「マジかよ…おい、」
揺すってみるが起きる気配は無い
それどころかすり寄ってくる
「お前、いくら俺がケンカ仲間だって言っても無防備過ぎだろ」
そう言いながらくすぐったり鼻をつまんだりしてみるが、余程深く寝付いているのか効果は無い
「駄目だ、起きやしねえ」
不意に、の顔を上向かせてじっと見つめる
…こうして見ると普通の弱そうな奴なんだよな
寝てる姿は普段のアホさとかパワフルさ微塵も感じねえし
思ってるより遥かに頑丈だしな
………
そっと顔を近付けた
「ん…」
の声にハッと我に返る
っ!い、今何しようとした俺…?!
慌ててを引き離そうとしても、服をガッチリ掴まれていて離れない
〜〜〜くそっ朝起きたら文句言ってやる!!
そう決意してを起こさないように抱え、自分のベッドへ入った
+++あとがき+++
最後の方だけタイロン視点になりました。
結構動揺したようです(色んな意味で二人とも)