ふっっかあぁぁぁっつ!!!





おとこん 26






目が覚めると目の前にタイロンの顔(しかもドアップ)があった
一瞬身体が固まる



「ふ…ふおぉぉおぉぉぉ!!!??



結構な音量だったから、多分外で鳥が数羽バタバタ飛んだと思う

ズザッっと後ずさろうとしたが、それは叶わない
なぜならガッチリと抱きしめられて身動きがとれないから

「〜〜〜えぇっ何で!?え?あれえぇぇー???ちょ、タイロンタイロン!! ターイーローンー!!!!

状況説明を求めようと大声でいびきを掻いてるタイロンを起こす

「……んだよ…っせぇ…」
「ちょっとこれどう言う状況!!?なんで一緒に寝てんの??!!!」
「…まえが俺を離さなかったんだろぉ…」

まだ起き切れてないのか、したったらずな上に語尾が伸びてる
……けしからん位可愛いな。

――っじゃなくて!

「っマジで!?うっそごめん!!!もう離れるから腕外して!」

するとタイロンは腕を外すどころか、更に密着してきた

「!!??ちょっと!!?」
に言いたい事がある」

寝た体勢のまま、コロンとタイロンの身体の上に乗せられる

「…なに?寝ぼけてんの?」
「もう目ぇ覚めてる。お前いきなり寝るな」
「それは…ごめん。自分でもまさか寝るとは思って無かった…」

眉を下げながら謝る

「心臓の音が気持ち良くて…つい」
「つい、じゃねえよ。他でもこんな事してんじゃねえだろうな」
「言った事あると思うけど、カーティスからはあるけど、自分からはしてないよ。…一回しか
「っ一回してんのかよ!」
「相手はシャークさんだけどな。手ぇ離してくんなかったんだ。んで、眠かったからベッドに潜り込んだ」
「お前…よく今まで無事だよなぁ。呆れ通り越して関心するぜ」

と溜め息を吐かれる

「というか、逆に“無防備過ぎだ”って心配される。
昨日は噛まれたりキスされたり舐められたり吸い付かれたりしたけど」
され過ぎだろ
「自分でもそう思う…言っとくけどタイロンも入ってるからな」

ジト目で見つめると、タイロンはバツが悪そうな顔になった

「――謝んねぇぞ」
「分かってる、良いって言っただろ。…昨日の実験、一人目がタイロンで良かったよ」

手を伸ばし、タイロンの頭を撫でる

「ふふ…普段お前の頭に手が届かないから、変な感じする」
「……」

しばらく撫で続けていると、タイロンは私の頬から耳、次いで髪へ触れ、
つ…と、親指で唇をなぞってきた。

「っ?」
「本当に無防備だよな。俺の上に乗ったままで会話してんだから」

フッと笑われる

「うっ…それはお前が上に乗せたからだろっ!?大体、そう思ってんなら私にガッチリ巻き付けてる腕外せよ!」

そう言うと、しっかりと両腕で抱き込まれた

「おい!逆の事してんぞ!?」
「自力で脱出してみろ。抜け出せるかみてやる」
「ちょっとぉ!??だったら難易度上げんなよこの馬鹿力!!」
「下敷きにしてないだけ簡単だろ?」
「そんな事されたら潰れるから絶対止めろ!!!ん゛ーーー!!ちょ、力強いって!!!」

もがいてもタイロンの腕はびくともしない

「ふぬうぅぅっ!!」
「ははは、おっ前変な顔だなー」
「ぬぅ!!笑ってんなよ脳みそ筋肉族がっ!!!」
「おぉっと、手が滑った」

物凄い棒読みの後、ギュッと腕の力が強まる

「ぎゃあ!ギブギブギブ!!!」

このまま絞め殺されるんじゃないか、私…!

「〜〜っ!ほんとに力緩めてくれ…きつ過ぎて酸欠になってきた…」
「お、悪ぃ…寝起きだと加減がどうもな」
「…はぁ…無理。出れない」

ぐったりとタイロンに身を預ける

「もうちょっと頭使って脱出しろよ
「お前に言われたくないわ!予算組みで頭悩ませてるくせに!!!」
「なっ!?俺は良いんだよ!!スチュアートに教えて貰ってんだ!!!」
「えらっそうに言うな!!自慢になんねぇんだよ!!!」

ギャアギャア騒いでいると、ガチャリと扉の開く音が。
ピタリと会話を止め、そのままの格好で二人してそちらを見ると――
「………」
「………」
「………邪魔したな」

――トータムおじさんでした。

「お…親父?!」
「お前達、程々にな。
え゛っ!!???ちょ、その意味深な台詞何ですかトータムおじさん??!!」

ついでにその『息子等の拙い所見てしまった』的な顔は何!?

「おじさん!?何か誤解してません?!!」
「いやいや、ワシは何も見とらんよ。気にせず続きを――」
「ッ続きって何だよ親父!!俺達別にやましい事してねえぞ!?」
「っそうですよ!これはえーとそのー…そう!鍛えて貰ってたんです!!!」

そう言うと、タイロンは小声で話しかけてきた

、それはいくら何でも無理があるんじゃねぇか?」
「シッ!黙ってろタイロン!!良いか、お前今から私が話しかけるまで喋るな」

タイロンの返事を待たずに、トータムへ話しかける

「トータムおじさん。これはですね、自分より体が大きい相手に襲われた時に、
どうやって抜け出すかの訓練なんです」
「…ベッドで訓練とは、中々考えられんのだが」
「失礼ですが床見てくださいよ。寝転べないですよね?」
「………確かに。世辞にも綺麗とは言い難い」
「でしょ?なっタイロン!床はお前も嫌だったんだよな?」

“合わせろ”と目で訴える
微妙な顔をしてタイロンは私に合わせる

「あ、あぁ…俺も床は嫌だった」
「ほら!タイロンもそう言っているでしょう?」
「………」
「もしおじさんの考えてるような事があるとして、私とタイロンの位置逆ですからね?
私じゃとてもタイロン押し倒せませんからね?」
「同意じゃないのか?」

おっと!?そうきたか

「あの…私達そういう関係に見えますか?今までの過ごし方含めて考えてください」
「……それは……見えん
「っですよね!お分かり頂けたようで、良かったです」

ホッと胸を撫で下ろす



「だが、そもそも寝てやる必要があるのか?」

この一言にギクリとする

「……いえ、女として襲われた設定ですので。でも本気で圧し掛かられたら潰れるので、
まずは軽く上からっていう事だったんですよ」

昨日タイロンに指摘された眼の泳ぎを意識しながら喋る

「ご理解頂けましたでしょうか」
「…ふっ。まあ、今回はそう言う事にしておいてやろう」
「……そうしてください」

何とか見逃して貰えたようだ。微妙だけど







トータムが去った後

「ふぃ〜…ビックリした…」

再びタイロンの上でぐったりする

「俺も…つーか何しに来たんだ親父は」
「さあ?私達がうるさかったから、のぞいてみたんじゃねぇの?」

実際には、私が朝っぱらから奇声を上げたのが気になったのではないかと

「そろそろ離せタイロン。お前今日も仕事だろ?風呂入ってさっぱりして来い」
「じゃあお前の負けな」

なんだと!?

「いつの間に勝負になってたんだ!!?」
「『訓練』なんだろ?だったら、抜け出せなかったの負けだ」

ニッと笑って腕を外そうとしてきたので、慌てて止める

「ちょ、待て外すな!私の負けは断じて認めん!!抜け出してやるわ!!!」

とは言うものの、力では絶対に対抗できない相手だしな…どうしよ…

「うーん…ほんとは昨日の今日でこういう事やりたくないんだけど」
「は?」

ずいっと顔を近付ける

「っ!???!」

そのままタイロンの耳元へ唇を近付け、触れるか触れないかのギリギリの距離で

ふっ

っと息を吹きかけてみる

「〜〜〜ッッ!!?!??」
ビクリとタイロンの体が跳ね、若干腕の力が緩んだその隙をついて抜け出す事に成功した

「よっしゃ出れた!!!…て、あれ?タイロン???」

見ると耳を押さえて呆けた顔をしている

「え。ごめん、そんなに苦手な場所だった?そういう私も苦手なんだけどさ…」

ベッド横からタイロンの顔を見ていると、ガバリと凄い勢いで起き上がった

「ぬぉっ!?いきなり起き上がるなよ!」
「……」
「タイロン?」

そう言えば、こういう事タイロンにしたの初めてだな


「な、なんだよ…噛んだりしてないだろ…」

どう来るか分かんないから引き気味で話しかける

お前こういう事出来たんだな。鈍臭いくせに」
「ッおいコラ。ケンカ売ってんのか?!――でも…ありがとな。タイロンのおかげで元気でた」

ほわりと笑ってお礼を言うと、タイロンは眉をしかめた

「…何もしてねえ」
「十分してくれたって。また弱ったら癒してくれ」
「だから俺は癒しって柄じゃ」
「私は癒し系だと思ってるぞ?優しいし。たまにジャ×アンみたいだけど」
「は?誰だそれ」
「えーと、剛田家の長男…?」

今回は疑問系ですっとぼけてみた

「俺に聞くな」
「まぁまぁ。良いじゃん気にすんな!っていうか、今日の抜け出しはちょっと卑怯だったから、また挑戦させてくれ」
「……もう寝転んではしねえぞ」
「んー…じゃあ今度は座ってやるか」
「そうだな」



後日、再び抜け出し挑戦中にトータムに目撃され、一悶着起きた事をここに追記しておく