みんな大概だよねっていう…






おとこん 29






「たっだいまー!おっかえりー!!そしていらっしゃいませお客様☆ようこそ我が家へ!
んーと、間取りを説明すると、奥にトイレと風呂があって、ここが台所&リビング。
廊下挟んで反対側が石の工房兼書斎。で、あっちが寝室………と、秘密部屋」
「秘密部屋?」
「うん。ロベルト、お前の家並みのセキュリティ☆っつっても、中には何にもないんだけどな。別名ストレス発散部屋。
あっ!そうだシャークさん、出来立てほやほやの新作商品見ます?ロベルトも好きな本あったら読む??」

工房兼書斎へ案内しつつソワソワしていると、シャークが落ち着けと言わんばかりに話しかけてきた

「…お前なんでそんなにはしゃいでんだ?」
「だって初☆お客様ですよ!!?これがはしゃがずにいられますか!わーいわーい!!」

そう言うと、カーティスが反論してくる

?僕は何回も来てるじゃないですか」
「不法侵入と招くのとは違うの!…えへ、ようこそカーティス」

ほわっとカーティスに微笑むとガッツリと顔をつかまれてキスされる

「んぅ!?〜〜ゃっちょ、何だよいきなり」
「したかったからしただけです」
「この酔っ払いがっ!!!酔い覚ませ!!!」
「酔ってませんよ?」
「嘘つけお前が一番酒臭いんだよおぉぉ!!!!」

顔をつかまれたままでぎゃあぎゃあ言ってると、そのまま後ろからロベルトに抱きつかれる

「なぁ、お前酒の席のキスに関しては動揺しないよな。」
「え?だって酔っ払いの絡み酒で普通にカウントしてたら、どんだけされてんだよ!ってなるじゃん。
私も酔うとキス魔になるみたいだけど、二人とも大概スキンシップ大好きだよなー。
タイロンは抱きついてくるぐらいなのに、お前等キスまで――」
ちょっと待て

今度は横からシャークに頭をわしっと掴まれた

…ちょ、今日凄くない?影分身とか使いたい気分

「??何ですかシャークさん」
「話が見えねぇ。…酔うと――何だって?」
「キス魔になります。酒場に居た時に黒歴史がどうとか言ってたでしょ?それです」
「………。被害者は誰だ」
「被害者って…酷くないですか」
「良いから、誰だ」

シャークの指先に少し力が入ると、条件反射のように口が滑る

「タイロンとこの二人です!私って、口調はしっかりしてて一見酔ってるとは分からないらしいんですが、
キス魔になるそうなんですよ。
しかも私自身、キス魔になってる間の記憶飛んでるんですよね…発覚したのがロベルトに女とばれた日の前日なので、
それから人前で飲まないようにしてます」
「…そうか。その辺は褒めてやる」

カーティスに顔を掴まれロベルトに抱きしめられたまま、シャークに頭を撫でられた

「…あの…何この状況?超カオスってるんですけど!!!ねぇ、この密着度なに???!!あり得ないんだけど!!!!!
ほんとは皆かなり酔ってるでしょ??!!!!っ落ち着けえぇぇぇぇええ!!!!

混乱して叫びっぱなしになっていると、ロベルトになだめられる

「いやが落ち着け?」
「こんな状況で落ち着けるか!!とりあえずロベルトとカーティスは放せ!!!」
「…なんでシャークは良いんだよ」
「頭撫でてくれてるから。…この感触久しぶりだなぁ。あぁ、私シャークさんに頭撫でられるの大好き」

ふにゃりと顔が緩む

「「「………。」」」

ん?あれ??なんか静かになった

「???どしたのお三方」

見るとシャークは顔を赤くし、カーティスとロベルトはジト目でシャークを見ている

「良かったなぁシャーク、にこんな好かれて」
「そうですねぇシャーク、いつの間にこんなに好かれたんです?」
「お…落ち着けよお前等、俺は別に――」
「良いんですよ?あなたは別に何もして無いんですから、そう、何も
「そうだぜシャーク。お前はなーんにもなーんにもしてないんだからな」

二人はそう言いながらさっきより更に密着してくる

「………お前等みたいに嫌がられるよりは遥かにマシだろ」

眉間に皺を寄せたシャークの発した一言で、ブワッと重たい空気になった

「っ!!?え、ちょ!!!!!」

こ…怖い…私を真ん中に置いてそんな空気出すんじゃない!!!

私が泣きそうになっていると、どうやったのか知らないがシャークが二人から引き剥がしてくれた
しかも無理なく、ごく自然に。

「…ふぇ?あれ、シャークさん今なにしたんですか?」
「昔の手癖をちょっとな。…

チラリと二人を見ながらシャークは私に言う

「――今日は抱きついてきても良いぞ?」
「ぇ!?…お、おお、おおお怒ったりしません??」
「ああ。」
「ほんとに?ほんとにほんとに怒ったりしません???」
「しねぇって…まぁ、嫌だったら――」

シャークが全部言い終わらない内に抱きついた

「おぉ…ほんとだ怒られない…!!」

私が目をキラッキラさせていると、頭上から呆れた声が降ってきた

「お前…この前俺の事警戒してただろ。もう元に戻ったのか」
「だってあれから何にもされて無いって事は、あの格好が駄目だったんでしょ?」
「…あー…そういう解釈すんのかお前は」
「??…!思いついた!!」

そう言ってするりとシャークの背を撫で上げると、ビクリとシャークの身体が揺れる

「ッ!?おい、!!??」
「いや、いっつも私ばっかりされてるので、この機会にシャークさんも是非」

ニッコリ笑って更に耳から首筋を撫で上げる

どれだけぞわぞわするか体験すると良い。技は研究済みだ(実体験で)

「…っその辺で止めとかねぇと危ねぇぞ。俺にも限度ってもんがある」
「う…やっぱり怒るんですか…」

ピタリと動きを止める

「違う。が、止めとけ」
「…はーい」

ぽんぽんとシャークに頭を撫でられていると、カーティスとロベルトが物凄く不満げに愚痴を漏らす

「シャークもそういうちょっかいかけてんじゃねぇか!!何でそれでこんな好かれてんだよ!!!」
「そうですよ納得いきません。説明してください」
「だーかーらー。シャークさんは必要以上に触れてこないの!!これ私が悪い事した時だけだもん!
見ろ、今だって私が抱きついてんのに腕まわされて無いだろ!?お前等だったら絶対まわすだろー?!」

私が更にぎゅっとシャークを抱きしめると、上から小さい声で「ぅっ」とうめき声が聞こえた

「?シャークさん??」
「…なんでもねぇ」
「うわー…シャークってすげぇな(手ぇ思いっきり握り込んで耐えてる…)」
「ある意味尊敬しますよ…自分の首を絞める行為なんて、僕にはとても出来ません」
「――でも向こうから来るんだぜ?」

シャークがそう言うと二人は考え込む

「まぁ…どっちを取るかだよな」
「そうですね。微妙なラインですよね」
「…でもこれはローリスクな代わりにローリターンではあるが、確実だろ?」
「あ゛ーー!!俺ローリスク無理!!!スリルが足んねぇよ、スリルが」
「そこはスリル求めんなよロベルト」
「いや、こいつだったらもしかして――みたいなさ、あるだろ?」
「確かに腕っ節強いですけどね。でもスリルはどうでしょう…ねぇシャーク」
「そうだな、俺はこれ位で丁度良いわ」

さっきまで対立?してたのにもう仲が良い…
もー!何だったのさっきの怖い雰囲気は。

「三人とも?何の話してるの??」

私が言葉を発すると、三人とも一気にこちらを見てきた

「…これだよ…ほんっと鈍いよなーこっち方面」
「ですね」
「だな」

そしてハァ…とまた三人揃ってため息を吐かれた

「っつーか!そろそろシャークから離れろ!!」
「えーやだ。こんな機会めったに無いんだぞ!普段抱きつかせてって言ったら頭潰されそうになるんだからな!!」
「当たり前だ!自分が女だって事を自覚しろ!!!(そんな事しょっちゅうされたら俺が持たねぇよ!)」
「分かってます、範囲内なんですよね?それは前回の実験で十分に分かりました」

シャークに抱きついたまま答える

「だからって行き成り態度改めるとか器用な真似出来ません。
私、メイズと一緒くらいシャークさん大好きっ子ですから。タイロンも大好きですけど!」
「うわ…微妙な位置だなシャーク」
「うるせぇ。良いんだよ………今はな」
「???」






ひとしきり私が満足したところで、ロベルトとシャークが部屋を見学しだした(カーティスは超寛いでる)

「ん?…なぁ、これなんて書いてあるんだ?」
「え、どれ??―――ぁ」

ドクリ、と心臓が大きく鳴った気がした。
ロベルトが見ていたのは、何の変哲も無い、ただの石のデザインと細工の詳細が書かれた紙だ。














―――日本語で書いていなければ。