さぁ、覚悟を決める時
おとこん 31
朝。カジノを訪ねる。ディーラーさんにロベルトの部屋の前までつれて来てもらった。
寝てるだろうから、少し強めに扉を叩く
ガン ガン
「ローベルートくーん。開ーけーてー」
ガン ガン ガン
「ローーベルーートくーーん。開ーーけーーてーー」
ガン ガン ガン ガン
「ロ〜〜〜ベ〜〜〜ル〜〜〜ト〜〜〜…オイコラ流石にこんだけ煩かったら起きてんだろ!!」
ガンガンガンガンガン!!!!
「…………」
全っっ然出てこねぇ――………。
「…………リアルマネーで、ゲー」
ガチャッッ!!!!!
「よっ!中入れ!!!」
「……んの野郎ッ!やっぱ起きてんじゃねぇか!!!!」
思いっきり寝ぐせついててパジャマだけど。
「だってが全然ゲームしてくんねーからさー」
「全然っておま、一昨日泊まりに来た時したばっかだろ!!!??昨日今日と私にゲーム再戦の催促状出しまくりやがって、
家の中手紙まみれだっつーの!!紙もったいない!!!!」
ほんとに頭の中ギャンブルギャンブルな!
あと恋愛小説とロマンス小説と冒険小説と…なんか、その辺
「帰る前に一戦もしてくんなかったじゃねぇか。だから今からしようぜ?」
「嫌だよしないよ。最後まで言わなかったしぃ〜☆」
「………じゃあ俺二度寝するから帰れ」
「ちょっ!?〜〜頼む!今日ライルさんとこ一緒に行ってくんない?」
パンッと手を合わせながら言うと、物凄い嫌な顔をされた
「は?なんで呼ばれてもねぇのに、俺がライルんとこ行かなきゃなんねぇんだよ」
「私、王宮には行った事無くて…プリンセスとお出かけの許可を貰いに行きたいんだ。
――ほんとはお前もだろ?私の事言いに行かなくちゃだもんな?」
ほんの一瞬だけ、微かにロベルトの雰囲気が変わる
「――…何の事だ?」
「とぼけなくて良いよ。ライルさんに頼まれてんだろ?私の事何か分かったら報告しろって。
理由、言おうか?プリンセスの友達なのに、あの人が私を調べないなんてあり得ない。素性が知れないんだから。
殺しにかかってくる事も無く今まで過ごせてたのは、私がお前を含め、変に有力者と交流があったからだろ。
特に、カーティス=ナイルにべったり目を付けられてる私は殺しにくかった筈だ。
私が酔ってロベルトの部屋に泊まった時にタイミング良く現れたし、接触して取り合えずの危険が無いか見たんだろうな
…その時だろ?頼まれたのって」
「………っはは」
じぃっと見つめていると、ロベルトが降参っという風に軽く両手を上げた
「参った。…いつから気付いてた?」
「文字の事聞かれた時。お前が一番しつこかったから、それで。」
「マジか。そんだけで?」
「だって、シャークさんの入手経路と同レベルで秘密って言ったのに、それでも聞いてきただろ?
こりゃあ何かあるなって思ってさ。だから喋った時に、覚悟した」
最悪殺されるかもしんないけど…避けて通れないしなぁ…
「だからさ、一緒に連れてって?報酬として前払いでゲームするから頼むよ。お願いっ!!」
再度手を合わせて拝み倒す
「………前みたいに本気出せよ?」
「!!っうん!ありがとロベルト」
そしてゲーム後、昼。ロベルトと一緒にライルの部屋を訪ねる
「よーライル!!」
「ロベルト…?」
「こんにちは。ライルさん」
ひょこっとロベルトの後ろから顔を出す
「…どうしたんですか?私に何か用でも?」
「ええ。今日は私の素性を少しだけお話しに来ました。調べてましたよね?」
ニコニコと確認するように聞く
「いやー、ライルさんったら全然気付きませんでしたよ。流石、年の功ってやつですか?」
「……私、貴女に年齢言ってませんけど?」
「ええ。でも、結構いってますよね?」
「………」
笑顔で続ける
「で?何が知りたいんですか?故郷はもう存在しませんので、私の記録一切ありません。ですので、
私の口から出た言葉のみが私の素性になります。ま。有力者の友人が多いただの一般庶民ですけどね。
――信じるか否かは、あなた様がお決めになって下さい」
そう言ってからざっと片膝を付き、頭を垂れる
「おい…?」
ロベルトが戸惑っているが、構わずライルに話しかける
「私って勝手に調べられて大人しくしている程、寛大じゃないんですよライルさん。いえ…ギルカタールの裏大臣様?」
頭を上げて言い放ったその瞬間、私の首にヒタリ、とライルの剣が突き付けられる
「「………」」
表情は変わらないが、ライルとロベルトが絶句しているのが雰囲気で分かった
ニッコリと二人を見上げる
「っとまぁ、こんな感じな私ですけど、やっぱり殺しますか?『やられたらやり返す』!!!
これはこの国では染み付いてる常識ですよね?調べられて気付かない方が悪いとは思いませんか?」
刃物を突き付けられているのにも構わず、ニィィっと笑ってみせる
「…どうやってそれを?」
「そうですねぇ…『知っていた』。と言うのはどうですか?」
「――…ふざける余裕があるとは、大したものですね」
剣を首に突きつけたまま、もう一方の手で眼鏡の位置をくいっと直すライル
「ふざけてなんかいません。最初に言った筈です。信じるか信じないかは、あなたに任せると」
真っ直ぐにライルを見上げる
「ただ、これだけは疑わないで頂けますか。私はここにいる人たちに危害を加える気は全くありませんし、
今まで私に関わってくれた全ての人達を裏切る気は毛頭ありません。――勿論ライルさん、あなたの事もです。
それでも私を捨て置けないと言うのなら、殺される前にあなたの目の前から…この国から消えます」
それまで黙っていたロベルトが、ピクリと反応する
「…おい、まさか前払いだったのは――」
「そうだよ?覚悟したって言っただろ。まぁ、ここにいれるのなら準備無駄になっちゃうけどね。
…私が居なくなったらさ、プリンセスに『黙っていなくなってごめん』って謝っといて?」
私がした覚悟。それは、この国から…皆の前から消える覚悟
逃亡準備も整えて、今この場にいる
「で、ライルさん。私の事殺しますか?それとも、信じてくれますか?」
「……………………」
ライルはしばらく考え込む
「…今までの貴女の行動は、多少有力者との接触が多いものの、警戒すべき物はありませんでした。
ですが今日。私の裏の顔を知られている事が発覚しました。生かしておく訳には――」
ライルがそう言った瞬間、ロベルトが騒ぎ出す
「ッライル!は人の秘密喋るような奴じゃ」
「ロベルト。落ち着け?まだライルさん全部言い終わってないだろ?お前の友達なんだから信用してろ」
「〜〜〜分かったよっ」
ロベルトをなだめつつ、ライルに先を促す
「――なので、しばらくロベルトを介して監視をした後、その事を誰かに話す気配が全く無いと判断したら
…の事を信用します。」
そう言って、ライルは剣を杖に戻した
「…十分です。有難うございます、ライルさん」
+++あとがき+++
ちょ…ちょいシリアス目でお送りしました…後編からはいつも通りアフォです…多分