ライルとの相談で、監視は約一週間〜二週間。その後、定期的にライルへの報告と言う形で何とかまとまった


「んはーーーーーーっ!!!疲れた…もう今日は頭使わないぞ私は」

ぐぐぐっと伸びをしながらぼやく。

はー良かった良かった死なずに済んだー…

「あ。そうだライルさん。今日来たのは他の用事もあったからなんですけど」
「なんですか?」
「プリンセスを嫁にください」

しいぃぃぃ……ぃいん

「は?」
「ちょ、何言ってんだ!!!???お前そういう趣味だったのか!!?」
「へ?…あ。間違えた!プリンセスと他国へ行く許可を王様から取って頂けませんかライルさん。一日で良いんで」

しまった。いや、何かほら、プリンセスってライルに守られてるから
プリンセス関連のお願いする時の心境ってそんな感じしない?私だけ???

「――その前にさっきの発言は何なんですか?返答次第ではお仕置きしますよ?

お仕置き…お仕置きって言ったか今!!?大臣のお仕置きって…怖!!!!!!

「っひいぃぃぃ!!ごめんなさいこれはその、冗談ではなく…じゃない!冗談ですけど、
えーとえーと、シャークさんとは違った意味でお父さん的なポジショ」
殺しますよ

ライルが再度、杖からスラリと剣を抜こうとする

短気!短気過ぎる!!!!!

「う、うわあぁぁぁ『おしおき』から『殺す』になってるぅ!!!!っごめんなさい許してください!!!!!!
いやなんか雰囲気がそういう感…ッ違ぁーーう!!!!そういう事が言いたいのではなくっ」
?落ち着けって」
「……う…ロベルト…ッ!!」

涙ぐみながらポスッとロベルトに抱きつく

「うっわ珍し…から俺んとこ来るなんて」
「…ライルさんが怖い」
「…さっきまで剣突き付けられても怖がらなかったくせによく言う…」
「それとこれとは別なんだよ!!!!」

多分『嫁』発言にイラッとしてるんだ…『お父さん』発言にもイラッッッとしてるんだ…!!!

「あー…まぁ、お前こいつの腹黒い殺気に免疫無いもんな。ライル、手加減してやれ。
はお前のせいもあるけど、俺のせいでも疲れてんだぜ?」
「は?……やはり彼女だったんですか??」
「そっち方面じゃねぇって。」
「??そっち方面って?????」

頭の上に?を飛ばしていると、ライルがロベルトに話しかける

「…その分じゃ、まだ最後まで手を出してないみたいですねロベルト。
この手のタイプははっきり言わないと分かってくれませんよ?」
「あからさまな事言ってもボケ倒しやがったぞ、の奴。」
「………どれだけ鈍いんですかこの子は。
「大陸一じゃね?いや、世界一かもな」

…なんか…物凄い失礼な事言われてる気がする

「ねぇ、なんか酷い事言ってない?」
「で、ロベルト。どうしては疲れているんですか?」

無視!!?

「俺がポーカーで本気出しちまって、そのせいで弱ってんだ」
「そうですか。いくら勝ったんです?」

あ。やっぱ私が負けたって前提で聞くんですねライルさん。

「今日はノーリミットで7万8千」
「…何度かしているんですか?」
「ああ。一昨日に一回、そん時は10万勝った。しかも俺がリアルマネー初めての相手で、この額だぜ?」

ロベルトがそう言うと、ライルは目を瞠った

「………本当ですか?」
「マジマジ大マジ。っつーか、こいつ中々相手してくんねーんだよなー…」
「たまにならって言ったのに、一週間経たずに再戦とか信じらんないから。これから最高ゲーム回数、一ヶ月に一回な。
勿論、無いなら無いで大歓迎☆むしろ無い方が嬉しい」

何が楽しくてロベルトに金むしり取られなきゃいかんのだ。

「は!!!?????それは困る!!!!!!!!!!」
「何で困るんだよカジノに住んでるだろ。そこで思う存分ゲームしとけ!私を巻き込むな!!!!!」

ぎゃいぎゃい二人して騒いでいると、ライルが静かに声をかけてくる


「何でしょうライルさん」
「次にロベルトと勝負する時は、私も呼んで下さい」
「へ…?――――…嫌です」
「………。」

ずんっと空気が重くなったが、ロベルトの後ろにサッと隠れ威圧感に耐えながら言葉を紡ぐ

「っお、脅したって無駄ですよ!さっき私が負けてるの前提でロベルトに聞いたでしょ!!
私、いつだって勝つ気満々なんですからね!!!!!」

涙目でぎゅっとロベルトのスーツを掴みながらそう言うと、ロベルトが言葉を発してきた

「だったら一ヶ月に一回とかじゃなく、もっと頻繁に挑んで来いよ」
「…やだ。今の状態だとまだ勝てないもん…特訓してから挑むの!!!」
「特訓って…誰とだよ」
「現役ギャンブラーの皆さん。あの人たち良い人だよねー。…でも、スキンシップ激しいのはこの国の特色なの?
ゲーム後とか皆でご飯行く時とかしょっちゅう絡んで――……ロベルト?」

なんか…ヤバイ空気出てますけど…

そろ〜っとスーツから手を外し、ライルとロベルトからいつでも逃げられる様に一定の距離を保つ

「…俺以外の奴とはしょっちゅうゲームすんだなぁは」
「だ…だってプレイマネーにしてくれるし…どっちかって言うと、気軽にやろうぜ的な感じだよ??」
「じゃあ次からプレイマネーかリミット(賭け金の上限有り)にしてやるから全部俺としろ。
雑魚にベタベタ触られてんじゃねぇよ」
「雑魚って…雑魚じゃないよ友達だもん。それに私、ちゃんと仕込んでもらっ」
「次そいつ等とゲームしやがったら、そいつ等殺してやる」

むっすりと拗ねた様な態度のロベルトがとんでもない事を言いだした

「なっ!?っロベルトのバーカバーカ!!!絶交してやるーーー!!!!!」

私はそう言い捨てて、バターン!!!と乱暴に扉を開けライルの部屋から出ていく





が。





またすぐにライルの部屋に戻ってきた
ドアの隙間からおずおずと顔を出してライルに話しかける

「あ…あのー、ライルさん。結局プリンセスと他国に行く許可は…」
「――…貰ってきても良いですよ?」
「!ほんとですか!!!」
「ただし、ロベルトとのゲーム時に私を呼ぶ事を約束してくれたなら…ですけどね」

え……

「それは…」
「大事なお嬢様を一日とは言え他国に連れて行くんです。
何かあれば当然、王から許可を貰った私に責任が降りかかってきますよね?
私の小さな望み位叶えてくれても…と思うのですが。あぁいえ、無理にとは言いませんよ?」

わざとらしく額に手を当て、首を横にふるライルの姿は、どう見ても強制じゃないって姿には見えない

無理にと言ってるようなもんじゃないかこの超絶腹黒鬼畜眼鏡!!
っつーかゲーム見たいだけだろおぉぉ!!!!
…………だが、責任問題には一理ある。

「…かしこまりましたプリンセスの教育係兼家庭教師様。」

部屋へ入り恭しくお辞儀しながら言うと、ライルは眉をしかめた

「嫌味ですか」
「さりげなく脅してくる人に嫌味くらい言ってもバチ当たりません」

しれっと言い放つと、ライルは楽しそうにフッと笑った

「別人の様に冷静だったり、私に本気で怯えたり、嫌味を言ってきたり…面白い子ですね。は」
「お褒めに預かり光栄ですー」

つんっとそっぽを向いて答える

ロベルトと目が合った――が、即行でそらされた

…まだ拗ねてんな…

「ロベルト」
「…………」
「ロベルト」
「…………」

呼びかけても答えない気満々だし

「ライルさん。ロベルトは私とゲームしたくないみたいなので、先程のお約束は無理みたいです」
「…その様ですね…>機嫌直す方法、教えてあげましょうか?
「え…そんなのあるんですか?」

ライルと顔を寄せ合ってコソコソと話をする

っていうか、そんなに見たいの?

「ええ。どうです?聞きますか?」
「うーん…自分で仲直りやってみて、頑張っても駄目だったら教えて貰っても良いですか?」
「良いですよ」


と言うわけで。早速行動開始とばかりにロベルトに近付く

「ロベルトってば」
「…なんだよ。俺とは絶交なんだろ?」

まだむっすりしてる。

「勢いで言っちゃったんだ。ほんとは絶交したいなんて全然思ってない。
言い過ぎてごめん。だから…仲直りして…?」
「……」
「駄目、かな…あ、寝ぐせ、まだ直ってない所があるよロベルト」

帽子を取り寝ぐせ部分の髪をすいていると、その手を握られ強引に引き寄せられた
ポトリと帽子が床に落ちる

「?ロベルト…?」
「――…俺も…言い過ぎた」
「うん。じゃあ仲直りな」

ポンポンとロベルトの背中を叩く

「でもゲームは全部俺としろ。飯くらいなら許す」
「まだ言うか…じゃあゲーム頻度はロベルトの方を多くするから」
「駄目だ。…どうしてもってんなら、俺も連れてけ」
「お前…自分のカジノあるのに他のカジノに顔出すって…営業妨害になんねぇの?」
「なるだろうな。だったらその店のオーナーに店賭けて勝負挑む」
「っおい!無茶すんな!!!〜〜分かったよゲームは全部ロベルトとするから!ご飯は良いんだよね?」
「たっまーーーーーーーーーーーにだけな!」
「…分かった。しばらく私の監視大変だもんな」

そう言うとロベルトは微妙な顔になった

「いや…そういう意味で言ってんじゃねぇんだけど」
「え、違うの?しばらく一緒に行動するんだよね?外、あんまり行きたくないんだろ?…あ。ライルさん!」
「…っ…はい?(抱きしめられてこれ程分かりやすく妬かれているのに全く気付かないとは…っ)」

今までこちらの様子を見ていたライルに声をかける

っていうか、何か肩が震えてるんだけど…笑ってる??

「しばらく監視って事は、プリンセスと他国行くのにロベルトも同行するんですよね?私が誘った事にして」
「そういう事になりますね」
「やっぱり。じゃあロベルト、水着用意しといて」
「は?……そういや、他国ってどこ行くんだ?」
「エメラルディアの海。許可出たら泳ぎに行こうって言っててさ」

そう言うと、二人は視線を私に向けてきた
っていうかロベルトはいつまで抱きしめてるつもりだ

「ロベルト、そろそろ放」
「女二人で海行く気だったのか。しかも、水着で」
「…?うん。何で?海なんだから当たり前だろ??」
「ライル。よりはマシだが、プリンセスも相当鈍いみてぇだな」

ロベルトがライルへ視線を向けると、ライルは大きく頷き、宣言した

「ええ全くです。保護者として、私もロベルトと同行します」
「えっ!!?ちょ、私達もう20歳と23歳――」
同 行 し ま す。良いですね?」
「……はい」

引きこもり二人が外、しかも他国まで付き添いだと!?
…ロベルトはなんとなく水着姿想像できるけど、ライルの水着姿が想像できない…
っていうか、水着…着るの?ライルが???
…どうしよう…ピチピチの全身ボーダー系(キャップ付き)だったら

「あの…ひとつ、言っておく事が」
「何ですか?」
「移動が魔法なんですけど…大丈夫ですか?日帰り予定なので」
「…まぁ、何日も国を出ているよりはマシなので、構いませんよ」

それを聞いてホッと胸を撫で下ろした

「じゃあ、日取りが決まったら教えて下さい。しばらくは、自宅からロベルトの部屋へ通いますから。
ロベルト、私朝から押しかけるから、この機会に生活態度改めたら?朝食作るし」
「無理。俺の部屋来た時に鍵渡すから、今度は受け取れ」
「………ライルさん。このギャンブル狂いどうにかして下さい」
「したいのは山々なんですけどね…いっそ泊まり込んで躾をするのはどうですか?」
「泊まりって…そこまで迷惑は…」
「俺全然迷惑じゃねぇけど?むしろ泊まりに来い。躾はいらん
「いや、やるとしたら躾目的の泊まりだからな?」
「あ゛ーじゃあ躾でも何でも良いからとりあえず来い」


と言うわけで、またしばらく人様の家にお泊まり状態です