敬語?そんな物使う必要ナッスィン★







おとこん 34







えー…只今鬼畜人間こと、ライルさんに呼び出され(ロベルト無しで)…彼の部屋で、二人っきりです。
しかも――本棚に押さえつけられてます。


何 こ の 状 況 !!!??


「あのー…ライルさん?質問よろしいでしょうか」
「なんですか?」
「一体全体どういった理由で私は今現在本棚に押さえつけられてるんでしょう?」

押さえつけられたままの状態で取り敢えず質問。
と、ライルが私の首に触れてきた。海に行って以来身に着けているシンプルな黒のチョーカーの上から、傷口に触れる。

「???」
「この首の傷…私が傷つけたと、お嬢様に言わないんですか?」
「え、言いませんけど…っていうかアイリーンに言う必要、あるんですか?」
無いです

きっぱりとした口調で「無い」と言ってきた。

「…じゃあなんなんですか、その質問の意味は」
「いえ、何となく権力のある者に助けを求めるのは定石では…と思ったもので。」
「あぁ…それで。この傷は私が望んで付けられた様な物なので。死なずに済んだ結果からみて、どって事無いですし。」

押さえつけられたまま器用に肩をすくませれば、ライルは一瞬目を見開き―――

「正真正銘の馬鹿ですかは」

本気で呆れた顔をして私を見てきた上に馬鹿って言いやがりました☆
…むかつくんですけど。なんでこんな本棚に押さえつけられて真顔で馬鹿と言われねばいかんのか。
「は!!?先生!発言の意図がわかりません!!!」
「――…本当に分からないんですか?」
「分からないですよ」

頭の上に?を数個飛ばしていると、チョーカーをするりと解かれ、今度はまだ治りきっていない傷口へ無遠慮に指を這わされる。

「ッ!…ライルさん、痛…」
「私に殺されそうになっておきながら、呼び出しに応えこうも易々と私に近付き、近付けさせる。これを馬鹿と言わずなんと言うんです?
それとも…何か考えあっての事ですか?」

ギリ…と傷口に爪を立てられた

「ぃった!!!〜〜ッライルさん…私、何回か言いましたよね?あなたが私を信じるか信じないかは、あなた自身に任せてるんです。
私から裏切るつもりは一切ありませんし、なにより…アイリーンを悲しませるのは避けたいと思ってます」
「――お嬢様を?」
「ええ。あの子は…アイリーンは私がギルカタールで初めて出会った子で…その…変わった出会い方をしたにもかかわらず
物怖じせずに私に話かけてくれた事が、とても嬉しかったから。だからあの子だけは絶対に悲しませたく無いんです。
なので、私を殺すと決めたのなら、もうちょっと後に殺してください」
「………は?」

真顔で言い切ると、ライルは一瞬呆けた顔を見せた。この顔はレアだ、心のusbに保存しとこう☆

「……大真面目に何を言いだすかと思えば…死にたいんですか?は」
「いいえ?でも私ではライルさんに敵いませんので。しかも今、私の事殺すつもりでいるしょ?
つまり私はライルさんの信用を得られなかった、と。
この時点で私の死亡は確定しちゃってますし…私、死ぬ気はないですけど、死ぬ覚悟は出来てます。
ここでは…ギルカタールでは、何が起こるか分かりませんし。
何かしらの命を搾取して生きているこの命だって、いつ、どこで搾取される側になるか…。
なので本気で殺すつもりなら、アイリーンの為にお別れ準備期間ください。
準備後なら私が国を出て行った事に出来るでしょうし、前みたいにロベルトとケンカ一歩手前にならないと思うんです。
―――まぁ…準備期間くれるのなら、殺そうとしてきても簡単に殺されてなんて、あげませんけどね。」

っていうかそうなったら殺される前に一矢報いてやるけどな!で。出来たら国外逃亡してやる!!
無抵抗でなんか絶対殺されてやんねぇ。死ぬ覚悟が出来てるだけで、私は生きたいんだから。

「………仮にそこまで準備して、大人しく殺されはしないんですか?」
「えぇ殺されません。生き残れるチャンスが少しでもあるのに、大人しくなんて出来ません。私、往生際悪いんで。
可能性が0じゃないのなら、足掻いて足掻いて足掻きまくってやります」

…逆に言うと可能性が0であれば抵抗しないって事だけどね。

と一瞬思ったけどそれを顔に出さずニィッと剣を突きつけられた時と同様に笑えば、ライルは心底楽しそうに…

「――では。殺さない代わりに今、ここで…泣かせます」
「へ?」

泣かす宣言してきました。

なんで?!

「貴女は本当に面白いですね。殺すより、泣き顔が見たくなりました」
「え。いやいやいや泣きませんよ何言ってんですか!?大体、泣く理由なんて――」
「いいえ有るはずですよ?がギルカタールに来て、まだ8ヶ月程のはずです。どんなに悪名高き人物でも、
少なからず愛国心というものは備わっているものです。
8ヶ月という短期間で、故郷が無くなって平気な人間を私は見た事がありません」
「………。だからって、なんで私がライルさんの前で泣かないといけないんですか」
「私が見たいからですよ」

チッ!そうだこの人ドSの最低眼鏡だった…!!!

「っオメェの都合なんか知らねぇよ!!!誰が泣くかこのド畜生が!!!!!!」
「本当は心底傷ついて絶望している時の表情や涙が見たいんですけど…この際、贅沢は言いません。
私に辱められて生理的に浮かんだ涙でも、恥辱にまみれつつ耐えている顔でも良いですけど?」

ちょ!!?私の話聞いてない上に、なんかこの人物凄い事言ってるですけど!!!!!

「あの、、ライルさんすみません。ものっっっすごいドン引きです…やめてくれませんかそういう事言うの。どれも却下ですし。
ライルさんに私の一番弱い部分見せるなんて気は更々ありませんし、辱められる気はもっともっとありません」

真っ直ぐにライルの目を見て引き気味に話す。この人自重って言葉知らないんだろうか…オブラートに包めよ!

しばらく見詰め合っていると、ライルが口を開いた。

…私、ガキは嫌いなんです。」
「は?はぁ…いきなりなんですか」

っていうか、さっきの破廉恥発言は無かった事になったのか?

「でも――貴女の様な苛め甲斐のあるガキは、好きですよ?本当に、退屈しません」
「……えーと、ここって好きって言われて喜んで良いポイント?それともガキって言われて怒るべき???
それともそれとも、苛め甲斐があるって言われてる所を突っ込むべき?????」

…………。ねぇ、もうこれどこから突っ込んでいけば良いの?
とりあえず、そんな嬉しそうな顔で言われてもこっちは全然嬉しくないけどね!!!?

「なので…退屈しのぎに私の玩具として扱ってあげます。」
「!?いらねー!!…ん?待てまて、待てよ私。玩具って事はー…一応は私の事信用するって事で良いんですか?」

まじまじとライルを見つつおずおずと尋ねる。

「そう取ってくれて構いませんよ?…これから会う度に苛めて差し上げますから――覚悟してくださいね?
「誰がそんな覚悟するか!!アホッ!!!ライル=スルーマンのアホーーー!!!
もうお前になんか敬語使ってやるもんかこの苛めっ子眼鏡ーーーーーーー!!」

まぁ信用してくれるのは有り難いけどね。でも玩具って酷くね??



それから監視期間中しょっちゅうロベルトの部屋に来ては、私の事を苛めて帰っていくライルの姿があったとかなかったとか…。