ギルカタールに来て約3ヶ月
いつまでも宿屋じゃ荷物増やせないって事で
スラム街にお家買いました






おとこん 5







「…まさかここに家を持つ事になろうとは…」

空いてる物件がここしかなかったって言う…
治安が悪いって言ってた通り危険です

まず、見た目ひょろっこいからメンチ切られる
ソイツぶちのめすと仲間がわらわらやってくる
更にぶちのめすともっと人数増える
大乱闘 開 幕

この状態が約三日程続いている

なんだこの悪循環…悪循環過ぎる
こっちばっかり疲れるんですけど。
いい加減イライラしてきたんですけど!

「あ゛ーーーー!!!もうっ!!」

家の中で叫ぶ
このイライラ具合どうしてくれよう…
アイテム取りにいく時にストレス発散出来るけど
それにしたってこれは酷い
いっそ気配消せたら楽なんだろうけど――
……………。

「……それだ!!気配だよ!消せば良いんだ」

なんで今まで気付かなかった私のアホ!!
あー、ただ問題なのは
私が気配の消し方知らないって事だ
…こうなったら実践あるのみ!
私は外へ繰り出した



「んー…外に出たは良いけど、具体的なやり方ってよく分かんないんだよな」

いっか。自己流で
てなわけで、数日間気配消しキャンペーン実施中のです
『習うより慣れろ』がモットー
初日こそ絡まれてたけど、今はコツを掴んで絡まれなくなった
これならここでも生活出来そうだ
やー一安心一安心
……んでも何か忘れてる気がするんだよなー
何だったっけ
斡旋所からの帰り道に考えながら歩いていると

ドサッ

路地裏から何かが倒れる音がした
音のした方向ってどうしても見ちゃうよね
そんでもってたまに見なきゃ良かったって後悔とかしちゃうよね!

 カ ー テ ィ ス = ナ イ ル が 居 る ん で す け ど

そして彼の側には人が倒れているがそこは見なかったって事にする
そうだよスラム街ってこの人居るんじゃん!!
私ってばなんで忘れるかなこんな大事な事

しかもばっちり目が合っちゃってるんだなーコレ
どうしよう
1・「お疲れ様ですー」とか言って去る
2・「あ。どうも…最近越して来たです」って挨拶する
3・これは幻。夜が見せた一時の夢。見なかった事にして脱兎の如く走り去る

是非とも3の方向で!
と言いたいけど、変に追いかけられても嫌なのでここは2で行く事にする
一回でも視認されたらもう逃げる意味無いし

「あの。最近こちらに越して来ました。私―――」
「知ってます。。プリンセスのお友達ですよね?僕カーティス=ナイルって言います」

ワオ。しっかり筒抜けってやんの
カーティスはナイフに付いた血を拭いながらこちらに歩いて来る

「この前偶然あなたを見かけたんですが、ここの連中と随分仲が良いんですねえ」
「は?」

いきなり何言ってんだこの人は

「遊んでいたじゃないですか。大勢で」
「――あれ遊んでたんじゃないんですけど」

絡まれてケンカしてただけで、断じて遊んでなどいない

「それにしても、あなた随分と気配にムラがありますね」
「はぁ。絡まれるのがうっとうしかったので、自己流で訓練中です」

そう言うと、カーティスは少し目を見開き、次いでニコリと微笑み

「…。あなた、暗殺者になりません?」
「なりませんっていうかなれません」

ノンブレス&早口で言う
っていうか、何で?

「才能ありますよ。この数日でムラがあるとはいえ、気配を消せるなんて普通出来るものじゃありません
この前の体捌きも中々の物でしたし。鍛えれば、良い暗殺者になれますよ?」
「それはどうも有難うございます。でもそんな仕事に就く気は全然全く
これっっっっっっぽっちも無いので丁重に遠慮させていただきます」
「そうですか。残念ですね」

お。あっさり引き下がってくれた
ホゥ。と胸を撫で下ろしていたら、爆弾を投下されました

「あなたの様な女性は中々いないのに」

ピシッっと硬直する
今、彼は私の事を“女性”と言わなかったか…

「………い、今なんと?」

ダラダラと汗が止まらない

「?“あなたの様な女性は中々いないのに”と言いました」
「――何故私が女性と?」
「見たので」

…………何を?
という私の疑問が顔に出ていたのであろう
満面の笑みで彼はこう答えた

あなたの着替えを

っっここに覗き魔がいます!!!
誰か!誰か捕まえてええぇぇぇぇ!!!
ぁぁあぁああ駄目だこの人捕まえられる人類なんてこの世に存在しねぇ!!!!

「〜〜〜っカーティス=ナイルともあろう者が何してんだ!!!」
「見た目は中性的、身体はローブで隠れて性別の判断がし辛かったので」

冷静に返される
分からなかったからって覗くとかどうよ
ぶっちゃけ見られても全然ダメージ無いけども
手で顔を覆う。頭痛くなってきた

「はあ…もうしないで下さいね」
「おや。怒らないんですか?」
「――怒って欲しいんですか?」

意外そうなカーティスにジト、と目を向ける

「いいえ。でも女性ってそういうものなんでしょう?」
「怒っても相手の心に響かなければ意味が無いので」
「…僕あなたみたいな人、好きです」
「――それはどうも。」

何がどうなってそう言う言葉が出てきたのか物凄く疑問ではあるが、突っ込んじゃ駄目だ
流せ!流すんだ!!

「じゃあ私もう帰りますんで」
「僕もですよ。一緒に帰りません?」
「……方向一緒なんですか?」
「というか、あなたの家の近所ですけど」

知りませんでした?と首を傾げられた

も ち ろ ん 知 り ま せ ん と も !

そういえば引越した当初、何度か挨拶しに行っても応答が無い家があった

「私が挨拶しに行った時家に居ませんでしたよね?」
「挨拶しに来たんですか?僕に?」
「相手があなただとは知らずにお伺いしました。留守でしたけど」

表札かかって無いんだもの。誰の家かなんて分かるわけ無い

「私最近まで宿屋暮らしだったので、ご近所と交友を温めておこうと思いまして」
「ああ。だからあんなに荷物少ないんですね」
ちょっと。何で知ってるんですか」
「だって入った事ありますから

またしても満面の笑み付きでさらりと言われる

「オイコラ私の知らない所で何してんですかコノヤロー」
「ちなみに寝顔も見た事あります」
「ちょ、ほんとに何してくれちゃってんの!?」
「いやあ、いきなり知らない人が越して来たので、調べておこうと思いまして」
「………」
「うっかり殺しちゃわないで良かったです」

そんなにニコニコしながら言われても全っ然嬉しくない!

「これからよろしくお願いしますね。
「…正直よろしくしたく無いので私に関わらないでください」

いや本気で。覗かれて寝顔まで見られたとかほんと信じらんねぇっす

「そういう正直な所も好きですよ」
「あーはいはいありがとうございますー」

それから会うたびにスキンシップ激しいカーティス
…絶対気配も読めるようになってやる!