普段の?
強いて言うなら玩具だな
おとこん 7
本日の仕事が終わり、斡旋所に顔を出すと歌が聞こえてきた
「すっきすっきすっきすっきすっき・すき!あ〜い〜して〜る〜」
…誰だこんなこっ恥ずかしい歌うたってる奴は
まあこんな事する奴は一人しかいない
辺りを見ると、椅子に座って暢気に歌ってる奴を発見した
「やっぱりか」
「ん?ようタイロン。お疲れ〜」
「お前そんな歌うたうな」
「?なんで?」
「なんでってお前…恥ずかしく無いのか」
「???」
カナデは本気で分かっていない様だ
「じゃあ他の歌なら良い?」
「ああ」
今のよりはマシだろうと軽く返事をした
―――のが間違いだった。
「げ〜んきっにだ・そ・う!い〜いおっとだ・そ・う!ドレミファプ・プ・プ!わ〜」
はおもむろに立ち上がり、歌いながら踊りだした
「ちょっと待て。」
の頭を鷲掴んで止める
「もー!何だよさっきから」
「何だその歌!あと踊り!!!」
「え?お×ら体操っていうんだけど。一緒にする?」
「するか!座れ!」
「他の歌なら良いって言ったくせに」
ブスッとむくれて椅子に座りなおす
コイツはなんで普段こんなにアホなんだ…
初めて会った時のはどこ行った
思えば、はじめてを見た時の背中はこっち来るなって雰囲気出してたし、
物腰が柔らかいかと思えば、戦闘になると好戦的で言葉使いまで変わる
俺が殴り掛かった時も驚きはしたが物怖じしなかった
今では好意的に接してくる
変な奴だ
「そう言えばタイロン」
「なんだ」
「これ、やるよ」
ガサリと紙袋を渡される
中を見ると手作りの食べ物だった
「……お前料理出来んのか」
「おい。それは一人暮らしの私に対する挑戦状か?」
「そう言えば家買ったって言ってたな」
「スラム街にね」
「お前みたいな奴がそんな所に家買って大丈夫か?」
「重ね重ね失礼だな!まぁ…強いて言うなら
たまにカーティス=ナイルが不法侵入してるけど、それ気にしなければ普通だよ」
「ふうん…」
待て
待て待て待て
今さらりと物凄い事言わなかったか
「なんだって?」
「ん?」
「今カーティスがどうって言ったよな」
「あーなんか気に入られちゃったみたいでさぁ」
ご近所さんなんだよねーとのほほんと答える
「お前それどうやって対処してんだ」
「対処?そんなもんしてないけど」
「しろよ」
「無理。だってあっちのが強いし」
「………」
「何その顔。大丈夫?」
俺は余程変な顔になっていたんだろう
が眉を寄せてこっちを見ている
「で?諦めておとなしくしてんのか」
「うんまあ、蚊が飛んでると思って日々過ごしてるよ」
「…暗殺者ギルドの長捕まえて蚊ってお前…」
こいつは死にたいのかと本気で思ったが、本人はいたって真面目だった
「だってさ、何っっっ回言っても聞かないんだよあの人。右から左に受け流してんだよ」
「そうか…そんなに何回も侵入されてんのか」
「そうなんだよちょっと聞いて!この前なんか朝起きたら隣で寝ててさあ!!」
自宅すぐそこなのに信じらんねぇ!とは怒っているが
俺はそんな状態に気付かないで朝まで寝こけてるお前が信じらんねぇよ
っつーか怒るのそこかよ!!
それにしても、カーティスってそっちの人種だったのか…?
サーっと顔が青褪める
「それで…タイロン?顔が青いけど」
「…何でもねえよ」
俺がため息を吐くと、は立ち上がった
「……ちょっとここ座って」
「あ?」
「良いから。座って」
大人しく座ると、は俺の額に自分の額をくっつけてきた
「っおい!何して――」
「動くな!!」
いつになく真剣な声だったから動きを止めた
「んー…熱は無いみたいだけど、疲れてんじゃない?」
「……もっと普通に測れ」
「は?普通に測ってるじゃん」
「……この顔の距離は普通じゃねぇ……」
「デコくっつけてんだから普通だろ」
「………」
思えば、あの時の俺はどうかしていた
思考がそっち(カーティス男色説)にいっていたせいもあるだろう
気が付くとの腰を引き寄せ抱きしめていた
「た、タイロン!?」
「お前細いな…ちゃんと食ってるか?」
「食べてるけど…ぇ。ちょ、何この体勢!?」
「にしては細過ぎだろ。これじゃあまるで、おん――」
次の瞬間、首筋にガブッと噛みつかれた
「ぃでっ!?何しやがる!」
「それはこっちの台詞だっつーの!離せ!!」
「…おい。お前こそ熱あるんじゃないか?顔赤いぞ」
「うっさい!!も、良いから離せよー!!!」
俺の腕の中から出ようと必死にもがいている
――こいつからかうと面白いな
フッと笑うと、は一瞬目を見開いた
?どうしたんだ??
「かゎ…っっトータムおじさんに言いつけてやる!
私の事抱きしめて離してくれないって言ってやるーーー!!!!!」
「ばっ!?言うな!!絶対言うなよ!!!(かわ?)」
急いで腕を離す
離した瞬間には出口へ駆けていった
そのまま走り去るのかと思ったが、こちらを向いて暴言を吐いた
「バーカバーカ脳みそ筋肉ーー!!!」
「んだとゴルァッ!!!!」
「早く部屋帰って休め!お大事に!!」
今度こそ外へ駆けていった
心配するか暴言吐くかどっちかにしろよ
その頃は―――
おおぉ…可愛いって言っちゃいそうになったよ!
危ない、ホントに危ないって!!!
しかもあの密着率ハンパ無ぇよ
気を付けないとその内ばれるんじゃないか…
どうしようどうしようどうしよう
と、内心パニックだった