この人との接し方がわかりません!
おとこん 8
夕暮れ時に北の斡旋所へ回復アイテムの補充をしに向かう
今までスチュアートには会っていなかった
そう。今までは
「お前が=か」
「………そうですが」
あーあ、会っちゃったよ自称貢ぐ男に
「スチュアート=シンクさんですね。有力者の方が私のような者にどういった御用でしょうか」
まぁ大体予想はついてるけど
「――アイツとはどういう関係だ?何の目的で近付いた」
「…アイツ、というのはプリンセスの事ですか?」
スチュアートさんよ…タイロンと一緒の事言ってるよ
「…」
答えないのは肯定という意味だろう
私は溜め息を吐き、質問に答える
「目的…ですか。そんなものありませんが。不可抗力ってやつですよ」
「不可抗力だと?」
「ええ。彼女の戦闘中近くに居合わせただけです」
「信じられんな」
「別にあなたに信じてもらわなくても構いません。用件がそれだけでしたら失礼します」
フンッと鼻で笑われた
一々イラッとくるなスチュアート
くるりときびすをかえし出口へと向かう
私自身が直感行動タイプだから、なんかこういう頭脳派?は苦手なんだよなー
「待て」
腕を掴まれる
もーこの人一体何がしたいの?
「私、あなたみたいにお金持ちじゃ無いので稼がないと生きていけないんです
用件がそれだけでしたら、離して下さいませんか」
ほんとは多少の蓄えあるからしばらく稼がなくても平気だけど
「―――お前、私が怖く無いのか」
「は?」
いきなり何を言い出すんだ
「私にそんな不遜な態度をとる奴はまず居ない」
「でしょうね。でも私はあなたの部下でも、仕事仲間でもありませんし
あなたの仕事に対して無礼を働いた覚えもありません」
身分や出世にも興味ありませんし
と肩をすくめる
「珍しい奴もいたものだな」
「この国の人間では無いもので。普通に暮らせればそれで良いんですよ」
「普通か…アイツと同じ事を言うんだな」
フッと笑う
お。その顔は中々素敵です
「スチュアートさん、いつもそんな顔してたら良いのに」
「?どういう顔だ?」
また元のツン顔に戻った
そうか。無自覚か
「何でも無いです」
「?…変な奴だな」
じゃあ私帰りますんで
――と言う前に奥からタイロンが出てきた
「おいスチュアート、いきなり出てい…って、なんで居るんだ」
「タイロンこそなんでいるの?ここ北の斡旋所だよ?」
「仕事だ。なんだお前等、知り合いだったのか?」
「初対面だ」
「初対面だよ」
スチュアートとほぼ同時に答える
次いでスチュアートの方を見ると目が合った
「…何ですか?」
「タイロンとは知り合いか?」
またほぼ同時に言葉を発した
「知り合いですけど…それが何か?」
私がそう言うとスチュアートはタイロンに目を向け
アイコンタクトで会話しているようだ
しばらく見合ってから、タイロンは真面目くさってこう言った
「断言するが、は何も考えて無いただのアホだ」
「何断言してんの!?っつーか何しに来たんだお前!っ帰れ!!!」
「仕事だっつってんだろバーカ」
「この野郎オモテ出ろや!」
「ハッ!俺に敵うと思ってんのか?」
いつも通り頭を鷲掴みにされそうになるが、掴まれる前にしゃがみ込み脚払いをかける
が、予測していたのか避けられた
距離を取りファイティングポーズでジッと見やる
その様子を見ていたスチュアートがタイロンに話しかけた
「…タイロン」
「何だスチュアート」
「お前がこの前言っていた丈夫な玩具というのはコレか?」
「そうだ。…名前言ってなかったか?」
「――聞いてない」
スチュアートは眉根を寄せている
それよりも、だ。気になる発言があった
「ちょいとタイロンさんよ」
「なんだよ」
「玩具って私の事?」
「…、自覚無いのか?」
「そんな自覚あってたまるか!その知らなかったのか?って顔 ヤ メ ロ !!
アホ!ネバーエンディングアホ!!!」
「あ?どういう意味だそれ」
「私は親切だから教えてやんよ。『果てし無きアホ』って意味だ!!」
「ほう…いっぺん死んどくか?」
ジリジリとタイロンがにじり寄って来る
…ちょっと言い過ぎた?
いやいや、玩具発言に比べたら可愛いって
するとそこにスチュアートが話しかけてきた
「=」
「はい、なんですか?」
「お前、私とタイロンとでは態度が違うな」
「…そりゃ、初対面と顔馴染みでは多少違いますよ」
「多少どころか、随分違うようだが?」
「………何が言いたいんですか?」
「――――、……。」
スチュアートは何かを言おうとして、口をつぐむ
何だ。何が言いたいんだ
私が戸惑っていると、タイロンが助け舟(?)を出してきた
「あー、。そいつお前と仲良くしたいんだってよ」
「は!?今の態度でなんでそうなるの!?」
バッとスチュアートを見ると視線を外される
…図星か?図星なのか???
ジィッと見つめると、若干顔を赤くして怒鳴ってきた
「別にそんな事は言っていない!」
「…本人は違うと言ってるみたいだけど?」
「おいスチュアート。この書類、北と南の合意のサインが要るんだ」
タイロンに目を向けると、スチュアートに書類を渡そうとこちらに近付いてきた
「無視かよ!」
「俺の仕事が終わってから好きなだけスチュアートと遊べ」
「遊べって…っつーか帰って良いだろ?コレもう帰っていいだろ!?」
「駄目だ」
スチュアートが拒否ってきた
「っ何でスチュアートさんが拒否!?えぇー帰らせてくださいよ…」
「駄目だ。まだ話は終わって無い」
「私の中では終了してますんでもう帰ります!!」
「あーうるせえ!、ちょっと黙ってろ」
「むぐっ!?」
そう言うとタイロンは私を片腕で抱き寄せて、手で口を塞いできた
「むぐむんむ!むぐむ!!!(何すんだ!離せ!!)」
「スチュアート。コイツどっか繋いどける部屋無いか?」
「むむむぐむ!(また無視か!)」
「――拷問部屋なら空いているが。」
「むっ!?(なっ!?)」
スチュアートがとんでもない事言い出した
何とか手から口を離し、スチュアートに抗議する
「ぷはっ!おうコラ銀髪クルァ!!何もしてないのに拷問部屋はないだろ!?」
「大人しく待っていれば、そんな部屋にも入れないが?」
「ぐ…!!っていうかタイロン!この間からスキンシップ激しい!!!」
何とか話をそらそうと、タイロンへ話題変換する
「あーなんか馴染むんだよなぁ、お前」
「………何が?」
「抱き寄せた感じが」
「……………」
ちょっと今の発言聞いた?
私相手に(見た目男同士という意味で)危ないんじゃないか
「そうか。でもあんまりそう言う事言わない方が良いぞ」
「あ?」
この脳みそ筋肉は相変わらず分かっていないようだ
今の私の見た目は『男』
タイロンの私の認識も『男』
「カーティス=ナイルと同じ事言ってる」
「!!!?」
バッと私を離す
そう。その反応が正解
カーティスは『女』って分かってやってる変態さんだからね
そういうのは好きな人にしろっていっつも言ってるのに相変わらず聞かない
「=。お前、奴とも知り合いなのか」
「ええ近所に住んでます。帰っていいですか?」
「駄目だ。よく生きてるな」
「だって彼、ただ働きしない主義じゃないですか
それに狙われるような事してませんし。帰っていいですか?」
「駄目だ。他に有力者で知り合いはいるのか?」
「他ですか?えーと、シャークさんとロベルトさんですね。帰っていいですか?」
「駄目だと言っているだろう。貴様、いい加減諦めろ」
流石に不機嫌になってきたスチュアート
仕方ない。折れるか
「で良いですよ。ちゃんと待ってますから、拷問部屋はナシにして下さい」
「フン。最初からそう言っていれば良いものを」
「諦め悪い性質なもので」
しばらくして仕事は終了し、タイロンは帰っていった
スチュアートと二人になる
「で。なにして遊ぶんですか?」
「は?何を言っているんだお前は」
「だって私と遊びたかったんでしょう?」
「そんなわけないだろう!私はそんなに暇では無い」
なんだ違うのか
じゃあ何で呼び止められたんだ?
「アイツに会う前のお前の記録が一切無いのが気になってな」
「………ああ。それですか」
スッと目を細めてスチュアートを見る
「残念ですが、それはご自分でお調べになって下さい
私が言う事は何もありませんので」
私自身、どういう理由でここに来たのか分からないのだから答えようが無い
「ま。調べられたらですけどー」
「……どういう意味だ」
「――どういう意味でしょうね?」
ニィッと笑う
何か分かったら教えてください、と席を立つ
「では、今日はこれでお暇します
今度差し入れ持ってきますから、その時は遊びましょうね」
手をヒラヒラ振りながら斡旋所を出て行く
スチュアートは引き止めなかったからもう大丈夫だろう
さて、何か分かれば良いんだけどな
後日、スチュアートは『遊び』と称して斬りかかって来た
それ遊びじゃないから!!