普通じゃない私のもしかして、なお話―シャークと結婚した場合―



今日の夕飯はカレー!
もちっシャークが好きだからっ☆
ウケ狙いでフリフリエプロンをつけて(ネタじゃなきゃこんなエプロンつけられるか!)鍋を覗き込む。
野菜がいい感じにやわらかくなっているようなのでカレールーを割って鍋の中にいれて、再び焦げ付かないように、
野菜が崩れないように、ゆっくりと丁寧に底のほうから鍋の中身をかき混ぜつつルーを溶かしていると、玄関の扉が開いた。

あっシャークだっ!

細火に調整して私はパタパタと玄関まで行き、シャークに突撃した。

「ぅぐっ!」

シャークの苦しそうなうめき声が聞こえたが構わずに彼の腰に手をまわして胸に頬をすり寄せる。

「うふふ〜おかえりなさ〜いvvv」

「あっあぁ……」

「お風呂にする? ご飯にする? そ・れ・と・も……、」

風呂

「! ちょっ! 最後まで言わせてよ! そして私を選びなさいっ!

命令形かよ! 大体な、帰ってくるたびにそれやってるだろ。一々付き合えるか」

風呂だ風呂〜とシャークは私を引き剥がして風呂場に向かう。
ムッとした私は嫌がらせにシャークの着替えをどっかの戦隊ものの全身ぴったりボディスーツにしてやった。
ははんっ着るものがなくて困るがいいわっ!
……でもちょっと不気味で見たくないけどね。

キッチンに戻って鍋に向かい、ふんふ〜ん♪と鼻歌交じりで無意味に踊りながら鍋をの中身を混ぜ混ぜ。
洗面所の方角から風呂場の扉がしまる音がする。おっあがったようだ。
さぁ困るがいい!存分に困って、そして謝って私に助けを求め……、って……、
 
ぎゃあぁぁぁぁ! 裸で出て来るなぁぁぁぁぁ!!!

「タオル巻いてるだろ」

「そういう問題じゃっ……(目のやり場にこーまーるー!)」

「誰のせいだ? お前が着替えを隠すからだろ」

「代わりの置いておいたじゃん! 黒いやつ!」

「あんなもん着れるか! いいからさっさと隠した着替えを出せっ!」

まだまだいろいろ言いたいことはあるが、とにかく上半身裸はキツイ!
適度に引き締まった腹筋とかすごーい……じゃなくてっ!

「ちょちょちょ、待って!すぐ持ってくるから、だからとりあえずこれで上を隠して!」

私がつけていたピンクのフリフリエプロンを押し付け、ダッシュで隠した着替えを取りに行く。
洗面所の前のトイレから隠した着替えを引っ張り出して(なんつーところに隠してるんだ)リビングに戻るとシャークが微妙な表情で立っている。

「はい、着替え」

「あぁ」

私の手から着替えをとって、フリフリエプロンは私の頭にばふっとかぶせて返された。
ちっピンクのフリフリエプロン姿写真に撮って、そういう趣味のある人に売りつけようと思ったのに。
残念だね。(でも怖いから私は見たくない)

キッチンに戻ってカレーの具合を見るとそろそろルーが溶けきるころで、多分もう食べられるだろう。
シャークが先程渡した服に着替えて後ろから覗き込んでくる。
私は首だけ振り返って笑顔で話しかける。

「カレーだよ、カレー!」

「見りゃわかるって」

「今日はおいしいよ! お母さんに教えて貰ってきたから!(グッ)」

「・・・・・わざわざ帰ったのか?」

「わざわざっていうか、鍵まわして扉開けるだけだけど」

私はギルカタールに住んでいるが、相変わらず異世界の実家に帰るのは簡単なことだ。
火を止めて鍋に蓋をする。
野菜を切ったまな板と包丁を洗おうとシンクに移動し、流しに包丁を移そうとすると後ろからぎゅっと抱きしめられ、包丁を落としかける。

「うぉっ! ななな何っどうしたの? シャーク?」

「何があった?」

「え"?」

「お前が実家に帰るのは大体何かあったときだろが」

「や、その・・・」

「また不安にでもなったのか?」

「・・・・・・・うん」

そう、私の病は治っていない。
元々治ることはないといわれているものだし、覚悟は決まっているから、今更治そうとも思わない。
薬をきちんと服用すれば悪化はしないし、第一精神的なものだから、体に不調が出ることはない。
ないのだが、気持ちの不安定さを完全に消せはしない。
たびたび言葉で説明するのが難しい、何ともいえない胸の苦しさと息苦しさとが折り重なって目に見えない心が痛み出す。
医者であるシャークでさえも理解ができない、病からくる、生きている限り続くであろう、不安発作。

「薬は飲んだのか?」

「常備のものは・・・頓服は、嫌。副作用起こるから」

「だがあまりひどいときは・・・」

「シャークはお医者さんだから、薬の必要性を唱えるのはわかるけど、何でもかんでも薬に頼れば良いってものでもないんだから、いいの!」

「で、薬に頼らず、また実家に帰った、と?」

「そ。ついでにカレーのおいしい作り方と隠し味とか、教わってきた」

きっと初めて食べたカレーに近いよ!と言うものの、シャークは一向に私を放す気配を見せない。

「食べないの?」

「食う」

「んじゃ放し……っどこ触ってんだー!! 刺すぞっ!?」

包丁の切っ先をシャークの腕に突きつける。
が、その切っ先を掴んで私から奪うと洗い場に落とす。
手のひらから赤い血が流れる。

「シャッシャーク! 血っ! 血がっ!」

「こんくらいどうってことねぇよ」

「そうはいかないよ! 手当てしなきゃ!」

「舐めときゃ治る」

「んじゃ今すぐ舐めろー! そして放せーはーなーせーぇー!」

「お前が舐めてくれないのか?」

「何で私が!? 〜〜もぉー!『は・な・せ』!」

パッとシャークが私から放れる。
ふぅ、全く、言術使わせないでよ。

「・・・・・そんなに嫌か?」

ぅ。
そんなすっごい寂しそうな顔しないでよ!

「だだだだって台所だよ、ここ! 物を作る場所であって・・・」

「ならいいじゃねぇか」

「何でよ!」

「作るだろ?」

「何を!」

「子供」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 目 が マ ジ だ !

「つーわけで抵抗するな」

「いやいや、そういうことは夕飯後、寝る直前にお願いします!」

「いつもベッド入ったらすぐ寝るだろ、お前」

「だって眠いんだもん!」

「んじゃ今ヤるぞ」

「ちょっ! 伏せようよ!ゴールデンタイムだよ!」

「何だよゴールデンタイムって」

「いや説明求められても・・・えーと、家族が食事とか一緒に過ごす時間帯?」


うん、微妙に(どころじゃなくて全然)わかってないよ!突っ込まないで!
でもどうやら説明のしかたが悪かったのか、説明の内容がわるかったのか、シャークは私を脇に抱えあげる。

「ぎゃあ!」

「お前ホンットに色気ねぇよなぁ・・・」

「だって脇に抱えられてるこの状況からして私荷物扱いじゃん!もっと普通お姫様抱っことかさぁ!」

「めんどうだからいいんだよ」

そう言ってシャークは私を脇に抱えたまま素早くリビングのソファに私をおろしてその上から覆いかぶさってくる。
おっ押し倒されてるー!?
っていうか、ここで!? せめてベッドにしようよ!

「ちょっシャーク!」

ジタバタ暴れてみるものの、結局気付いたら両手を私が持っていたエプロンで拘束されました。
・・・なんですか、この状況。
両手拘束とか、どう考えてもxxプレイじゃん! って私までゴールデンなときにプレイとか言っちゃってるし!
あーもう!

「もちつけー!!!」

「それをいうなら落ち着け、だろ?」

「同じ意味だからいい……てっひゃぁっ! 〜〜みっ耳に息吹きかけないでっ!」

「ホンット感度いいな、お前」

「〜〜ッ恥ずかしいことをサラッというなぁぁぁ! ってまっちょっ本気まっ……んぅっ」

騒いでいたら舌打ちされてキスされた。
いつものように軽いものでなく、本気な濃厚なやつ。

角度をかえて何度も喰らわれて、たまに舌先が唇をなぞる。
息が苦しいのに、一時も放してくれない。
押し返したいのに腕は頭の上で拘束されているし、言術は言葉に出さなければ使えない。
成す術なくキスされ、酸欠でボーっとする中、シャークの舌が唇、そして歯列をなぞって入り込んでくる。
逃げる舌を捕らえられ、絡まれて益々息苦しさを感じるはずなのに、
気付けば何も考えられなくなって、自分からもシャークのキスに応えるように舌を絡ませる。
やっと唇が放れると透明な糸がツッ、と名残惜しそうに引いて、シャークの口元を濡らすから、キスしている最中よりも恥ずかしさを感じた。
生理的な涙が瞳に滲んでいて、それをシャークがペロリと舌先でぬぐう。

「……恥ずかしくないの?」

「誰も見てねぇだろ?」

「誰かに見られてたら恥ずかしいの?」

「……まぁ、少しは……」

「ふぅん……」

今度は私がニヤリと笑った。
何だよ、とシャークが目で訴えてくるので、私は歌うときのように楽しげに言った。

「カミュとシルスは見てるよ?」

「〜〜何ッ!?」

思わず辺りを見渡すシャークに声をあげて笑う。

「見えるわけないよ。だって異次元で待機してるもん」

「…………こっちのは見えてるのにか?」

「そう、いつでも、見てる。私は精霊の守人だよ? いつ危険な目にあうか、わからないんだから」

生まれたときから様々な世界から刺客がやってくる。
成人するまでは毎回カミュとシルスが刺客を片付けてくれていた。
だから常に見張り続ける。それはどの時代の守人にも代わらずとられていた措置。

「でも、最中は、見てないよ。私が遠ざけてる。恥ずかしいから」

「そうか……」

「シャークってば考えたことなかったの? カミュとシルスが見てるってこと」

「いつでもそばにいるってのは聞いてたが……普通見てるとは思わねぇだろ」

「まっ見えないしね。大丈夫、言えばすぐ見ないようにシャットアウトしてくれるから」

「んじゃ、問題ねぇな?」

「――うん」

私がうなずくとシャークは優しく微笑んでまたキスをする。
甘い甘いキス。

そして私達は互いに求め合った。
……ちょっと苛められたけど(だって手、拘束されてる時点でいじめでしょ!?)






私の愛するだんな様、シャーク=ブランドン。
ギルカタールの有力者で、悪党だって言っても、私(とメイズ)にはいつだって本気で優しく接してくれる。
まぁどっかの赤毛さんと比べたら、小悪党だと思うけど(ん? 誰もあんたのことだなんて言ってないよ? 稀代の暗殺者さん)。

今日も私は幸せの真っ只中にいます。








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