朝の目覚めって普通爽やかなもんじゃないの?
寝起きとナイフと変質者
ぱちっといつもの様に目が覚めると、目の前にカーティスの顔があった
「……………。おはようカーティス。またやってんのか」
「ええやってます。おはようございます、今日も良い天気ですね」
ニッコリ微笑むカーティス。
「そうだな。……朝ごはん作るから放してくれっつーか………毎朝毎朝、何この体勢」
「もう少しだったんですけどねぇ…残念です」
「っなにが『残念です』だっ!!いい加減寝てる時に私の事襲おうとするのや・め・ろ!!!」
目ぇ覚めたら何故か止めてくれるけど…ほんとに何でだ。意味分からん!
「いえ、の危機管理能力がどれ程なのか気になって…無意識下は相当のレベルですよ。僕が保障します。
本気になって服を脱がそうとした時点で必ず目覚めるので。」
ニッコリ笑って保障された
「(…脱がすっていうか…切り裂こうとしてるよね。ナイフで)ソウデスカ。
……気になってた事が分かったんだから、もうすんなよ。…毎朝毎朝毎朝毎っっっっ朝!!
なんっでお前に脱がされそうな状況で目ぇ覚まさないといけないんだよおぉっ!!!!」
…たまには普通に起きたい…いや本気で。
げっそりしながらカーティスを押しのけ、のそりと起き上がりグググッと伸びをする
自宅での朝は、いつもこうして始まります。
刃物から始まるって何の冗談ですか。いじめですか?いじめなんですかコノヤロー
そう、ここまではいつもと同じ――――だったんです。
が。
今回はいつもと違う台詞を聞いてしまいました。
ついでに言うと、いきなり過ぎて聞こえないフリも出来ませんでした…。(普通に反応した私のバカバカバカ!アホか!!)
「あ。そうだ。僕、一度試してみようと思うんです」
「んー?何をー??」
「変質者を」
その言葉を聞いた瞬間、心臓が止まるかと思った。っていうかちょっと止まった気がする。
「へ、へぇぇ…それはそれは…良い、ご趣味で…?」
ダラダラと嫌な汗を出しながらカーティスを見やる
「?何です、変な顔をして。が言いだしたんじゃないですか。『ジョブチェンジすれば?』って」
こくりと首を傾げるカーティス
いやそうだけど…え?いつの話??そして何故、今更になって実行しようとするんだ??
結構前だよね言ったの。もう時効だよねその言葉!!?
っつーかそんな不思議そうな顔すんなっ!
――…物凄く嫌な予感がするのは気のせいだよね気のせいだろ気のせいと思いたい…!!!
「なので」
「う…うん?」
ニッコリと笑うカーティスに返事をしたくない、この先を聞きたくないと思いつつも、引きつった笑みで返事をする。
「ターゲットになって下さいねv」
「Oh〜☆ユーアークレイジー!クレイジー!!クレイジィィィ!!!!!!イカレてやがるぜこの天才暗殺者ちゃんはよぉっ!!」
ッやっぱりかあぁぁぁぁっ!!話の流れからしてやっぱり私がターゲットなのかあぁぁぁぁあぁぁ!!!!!
頭を抱えて悶えていると、更に言葉を紡がれる。
「イカレてません。さっさと“ハイ”と言ってください」
私のボケを相変わらずスルーしつつ、ベッドの上で足をバタバタさせながらねだって来るカーティス
「アホかっ!!嫌に決まってんだろいっぺん死んで来い★」
「そんな事言わずに。ね?」
「いやいやいやそんな可愛く首傾げて『ね?』って言っても嫌なもんは嫌だ。
変質者のターゲットに自らなるとか物好き過ぎるだろ!!」
「…わがままですねぇ…というか、また『可愛い』って言いましたね」
はぁ、とため息を吐きながらフルフルと首を振るカーティスに、私はビシィっと指をつきつけ、
「 お ま え だ よ わがままなのは!!絶対絶対、ぜぇぇぇったい!嫌だかんなっ!!
あと可愛いもんを可愛いと言って何が悪い!!!」
胸を張りつつそう言うと、カーティスはむぅっと不満げに足をバタバタさせる
「僕の事可愛いって言うのは位ですよ…。分かりました…………………………じゃあ勝手にします」
「オイ聞こえてんぞ変態。すんなっつってんの!」
「何故です?良いじゃないですか、職業変えるのは僕の自由でしょう?」
「職業じゃねぇぇぇぇぇぇ!!!!ちょ、もうボケたのかお前っ!しっかりしろぉ!!!!」
カーティスに近付き襟元を引っ掴んでガクガクと揺ら―――そうとしたらガシリと腰を引き寄せられた。
「…から僕に近付いてくるなんて…今日は良い日ですね♪」
「………。駄目だ。言葉が通じねぇ…」
という訳で、私では手に負えないと判断し、ギルドに連れて行く事にしました。
++++++
「―――って事なんで、コレ何とかしてくれよ。お前等」
カーティスを指差しながら幹部三人組に助け(?)を求める
「なっ!?!カーティス様に向かって“コレ”とは何だ!!指を差すな、指をっ!」
「っつーか無茶言うなよ!俺等がカーティス様に意見出来る訳ねぇだろ!?」
「そうですよ!相手がカーティス様だと知って尚、そんな不遜な態度をとるのは位のものです!!」
上から
アリク
イディット
ユージーン
三者三様に私に向かってぎゃいぎゃい言ってくる。
「いやいやいやまぁまぁまぁ。そんな事は置いといてさ、カーティスが変質者になるってのは総スルーなわけ?」
「「「…………。」」」
私がそう言うとピタリと黙る三人組。初めに口を開いたのは、イディットだった。
「いや…だって、がターゲットだしなぁ…?アリク」
「ああ。試すって事は、一時的に、と言う事だ。つまり、暗殺者を完全に辞めると言う事ではないので俺達には支障が出ない。
しかも相手がだし」
「ですね。カーティス様がずっと変質者をするのなら、流石に考えますけど。…別に少し位ターゲットになったって
構わないんじゃないですか?からすれば、いつもの事でしょう?」
…そうだこいつ等こう言う奴等だった…!くそっ人選ミスった!!!
っていうか私だったら良いってのはどういう意味だ!!
「くっ!!!」
「ほら、部下達もこうして賛成してくれている事ですし、安心してターゲットになってくださいv」
水を得た魚の様に満面の笑みで「ターゲットになれ」とゴリ押ししてくるカーティス。
「どこに安心すりゃあ良いんだよっヴォケ!!第一、儲からないんだぞ?!経費ばっかかさむんだぞ!!?」
「「「がされるとしても問題はそこじゃないだろ(でしょう)」」」
「えっ?違うの???――…っていうか、暗殺者から見てもやっぱ駄目な事だって認識はあるんだな」
ジト目で三人を見つめるとサッとそれぞれに視線を逸らされる
「なんだ…そんな事心配してたんですか。お金なら腐るほど持ってるので儲からなくても平気です」
「………(普段ケチのくせに…)。やめないと…やめないとお前以外の暗殺者の仕事邪魔してやる…!!」
そう言って私は逃げられないように素早くイディットに抱きついた
その瞬間、アリクとユージーンは私達からサッと離れる。
ん?イディットを選んだ理由?…3人の中でパワー系で動きが一番遅いから(っても微妙な差だけど)
「げっ!ちょ、!!??」
「フフフ…放さないからなイディット☆」
抱きついたままエヘッと笑うと、イディットは何故かボッと顔を赤くした
それを見たカーティスがスッと目を細め、イディットに、
「…イディット…今すぐから離れなさい。」
と殺気混じりの言葉を放ち、青くなるのを通り越して白くなるイディット。
わたわたと抱きついた私を離しにかかってくる。
私だって必死なので絶対離れないもんね!!
「ッッ!!っ!!頼む!頼むから今すぐ俺から離れてくれっ!!!!」
「やだっ!カーティスが変質者やめるって言うまで、は・な・れ・な・い!!イディットの仕事の邪魔してやる!!!」
「お前が俺の仕事邪魔する前に死んじまうっつってんだよ!!!」
「死なない死なないだーいじょうぶだって!傷モノになって動けなくなったら私がイディットの事貰うから!!」
そう言うと、カーティスもイディットもピタリと動きを止めた。
アリクとユージーンはぽかーんと口を開けてこっちを見ている。
「…?それはどういう意味ですか?」
「ん?私のせいで傷モノになったら面倒見るって意――あれ?これってイディットが私の嫁になるって事…?」
ふと疑問に思って言った私の言葉に、全員凍りついた。
「よ…嫁って、おま…」
「え?だって私がイディットの事養う=私が旦那って事でしょ?ほらっイディットが嫁じゃん!!」
「…お前俺と結婚する気か?」
「だから傷モノにしちゃったらだって。男1人位養ってやんよ!私こう見えて結構貯金あるから」
抱きついたままフンッと胸を張る。
「…あ。でもイディットにも選ぶ権利があるよね…ごめんな…私が旦那じゃ嫌だよな…」
しゅん…としながら言うとイディットはわたわた慌てだした
「え、あ、いや、、そんな事ねぇ――」
イディットが何か言いかけた瞬間、カーティスからぶわっと物凄い殺気が溢れ出てきた
私とイディットは揃ってビクッと身体を硬直させる(アリクとユージーンは結構遠くへ避難済み)
「「ッ!!?」」
「……イディット」
「ッ!!は、はいカーティス様!!!」
「それは…の事を(女性として)好いていると取っても?」
「え゛。いや、そういう意味じゃ…」
「――やっぱ私が旦那じゃ嫌、だよね…」
「いやも、そう言う意味ではなくてな――」
「じゃあやはりカナデの事を好いているんですねイディット」
更に殺気を膨れ上がらせるカーティス
「〜〜〜〜ッッ!!(め、面倒臭えぇぇぇっ!!!)」
抱きついたままイディットをジーッと見ていると、顔色がさっきよりもっと悪くなってきている
あれ?もしかして私よりイディットの方がヤバめ…?
…開放しようかな。半泣き通り越して本気泣きしそうになってるし…
「…分かったカーティス、離れるからそんなに怒るなって。ごめんなイディット。
――ほら、私が離れたんだからお前も殺気しまえよ。イディット泣きそうになってるだろー?」
なんか、イディットの方をじぃぃっと見てまだ殺気出してるんですけど…
「もー、ごめんってばカーティス。そんなに仕事の邪魔されるの嫌なら、お前だって変質者やめるってすぐ言えば良かったのに…」
「……はぁ。って本当に鈍いですよね…」
そう言うと、カーティスは殺気をしまい込み私に向かってため息吐いてきました。
「あ゛?んだコラ朝から変な発言したと思えば今度は鈍いってか!?」
「事実ですよ。まったく…朝からの危機管理能力心配する僕の身にもなってください」
「は?…心配って、なんで????」
え。あれって私の身を案じての事だったの?ナイフで服切り裂こうとするのが!!?
「…カーティスが何に対して心配してるか良く分かんないけど、朝からナイフは間違ってると思う…」
「(無意識下は男に対して警戒心ちゃんとあるのに)起きた途端にその鈍さはある意味一級品ですね」
「っ!また鈍いって言ったな!?お前だって寂しがりやの鈍ちんのくせにぃ!!!」
ぎゃあぎゃあとカーティスと言い合っていると、イディットが控えめに声をかけてきた。
「あの…カーティス様、俺の担当分の仕事準備しても良いですか…?」
「……、まだいたんですかイディット。もう行って構いませんよ?」
シッシッとイディットを追い払うカーティス。…扱い酷ぇな。
「あっイディット、抱き付いてごめんなー?でも傷モノ云々は私本気だったから!」
グッと親指を立てながらバチコーン☆っとイディットに向けてウィンクをする。
「―――イディット…早く行きなさい」
「っはい!!!(怖えぇぇぇ!!!!!!)」
++++++
朝ごはん食べて無かったので自宅に戻ってきました。話の決着がついてないので、カーティスも一緒に。
「っつーか普通に気になったんだけどさー、変質者を職業にするんだったら依頼者必要なんじゃね?
そして初☆ターゲットが私じゃなくても良いんじゃね??誰がお前に変質者してくれって依頼すんの???」
「あ、気付いちゃいました?なら気付かないと思ってたのに」
「オイコラ馬鹿にすんな!私だってそん位気付くっつーの!!で?どうするつもりだったんだ?」
「自分で自分に依頼しますよ勿論」
…それって絶対に職業じゃないよね☆もう本気のストーキングって事だよね★
「頼むからやめてくんない?もう私がシャークさんの病院にいる時とかに十分してるじゃん。」
「それとコレとは別腹です」
「何だ別腹って!?」
頑張ってやめてくれと頼みこんだのですが、それから粘着質にストーキングされました…
しかも暫く気付きませんでした。(気配を暗殺時並に完璧に消されてて)
そして私の気配を読むスキルが上がったのも言うまでも無い。